なかなか超えるのが難しいと言われる偏差値の壁。
その原因の一つとなっているのがクラス帯の壁なのではないかと思います。
というわけで、今回はクラス帯の壁について考えてみます。
クラス帯
大手塾は集団授業が基本となりますが、当然ながら生徒数が多くなるとクラス数が増えます。
だいたい1クラスあたり20~30名というところが多いかと思います。
1人の講師が指導できる人数がそれくらいということなのでしょう。
塾として採算が取れる(黒字になる)のが20名くらいだと思います。
生徒数の多い校舎になると、1クラスあたりの人数がもっと多くなることもあります。
ですが、人数が多くてもクラス内の学力差は小さくなるので、指導はしやすくなります。
ただし、一番上のクラスと一番下のクラスは成績分布(正規分布に近い場合)から考えると中間層のクラスより人数が少なめになることが多いかと思います。
しかし、これは単純に1組、2組といったクラス分けであって、もっと重要なのが「クラス帯」というものです。
塾によって名称は異なりますが、だいたいどこも似たようなシステムになっています。
3年生か4年生くらいまでは2つのクラス帯、高学年になると3つのクラス帯に分かれているといった感じですね。
偏差値による区分
クラス帯が2つの場合は、だいたい偏差値50がそのボーダーになります。
偏差値50以上なら上位クラス、50未満なら下位クラスという感じです。
クラス帯が3つになると、上位クラスは偏差値60以上、下位クラスは偏差値50未満、偏差値50~60が中間クラスという感じになります。
これは塾内の偏差値ですから、上位クラスは学年の15~20%になるかと思います。
中間クラスが30%程度、残りが下位クラスという比率になります。
簡単な整数比にすると、1:2:3とか2:3:5くらいでしょうか。
生徒数の多い校舎になると、それに近いクラス数の比になるかと思います。
そこに塾側の都合(教室数やキャパ)とか、指導方針などによって調整が入ります。
ここで、最難関中を目指すのであれば上位クラスに在籍することが目標となります。
学習内容による区分
塾の通常授業のテキストは全クラス共通となっている塾が多いと思います。
コストの都合やクラス替えに対応しやすくするためですね。
ですが、上位クラスと下位クラスが同じ難易度のものをやるのは無理があります。
そこで、テキストの内容が区分されています。
低学年のうちは2段階(基本、応用)、高学年になると3段階(基本、応用、発展)くらいに分かれていると思います。
名称は塾によって異なりますが、問題レベルの区分はだいたい同じです。
上位クラスは宿題範囲、およびテスト範囲が全範囲(基本、応用、発展)
中間クラスは宿題範囲、およびテスト範囲が基本、応用
下位クラスは宿題範囲、およびテスト範囲が基本のみ
といった感じで分かれています。
ただし、下位クラスでも応用の一部が宿題に指定されていたりすることもあります。
それならいい加減にテキストを改定しろよという話ですが、そう簡単に出来るものではないのです。
問題数の比較をすると、基本:応用:発展=2:1:1くらいの比率になるかと思います。
つまり、クラス帯で比較すると上:中:下=4:3:2くらいの宿題量の差になってきます。
上位クラスは下位クラスの2倍の勉強量で、しかも内容的にもかなりレベルが高いということになります。
中間クラスと上位クラスの差が少ないと感じるかもしれません。
ですが、最難関志望になると通常授業以外に最難関向けの特訓講座を受講している人がほとんどです。
さらに灘志望ともなると灘中向けの特訓をさらに受講していたりするので、1週間当たりの宿題量はもっと多いです。
上のクラスに上がりたいと思っている人は、上のクラスの宿題量とレベルに慣れておいた方がいいと思います。
クラスが上がって急に宿題量が増えて、勉強が追いつかなくなったり、テストの点数が取れなくなったりすることがよくあります。
上のクラスほど平均点が高くなりますから、宿題もやり込まなければなりません。
授業内容の違い
塾の授業というのはそのクラスの宿題範囲、テスト範囲の問題を解けるように指導するというのが原則です。
もっと難しいことを教えて欲しいというのであれば、上のクラス帯に上がってくださいというスタンスですね。
となると、上位クラスほど宿題量や演習量が増えてきます。
同じ授業時間で倍くらいの量をこなすのはさすがに無理がありますし、上位クラスともなると基本内容はすでに特訓講座などで先取りをしているので、授業は発展レベルが中心となります。
下位クラスが基本内容を一から説明するのに対して、上位クラスではみんな理解できているので発展問題をいきなり解かせる演習なんかが可能になるわけです。
塾やその校舎によっては生徒数が少ないため、上位クラスと中間クラスの合併クラスなんかがあったりします。
基本的に合併クラスの場合、下のクラス帯に合わせた授業をするのが原則になるかと思います。
塾あるいは塾講師にとって、”難しくてわからない授業”をすることは致命的です。
したがって、合併クラスの中の上位クラスの生徒は自力で発展問題を解かなければならないケースが多くなります。
それがうまくできずに成績が下がっても、合併クラスの中でクラス帯が下がるだけなので、塾に対するクレーム(下のクラスは授業レベルが低い)は出ないわけです。
上位クラスは優秀な先生が指導してくれる
「上位クラスは優秀な先生が指導してくれる」と思っている人が多いかと思います。
実際は、クラス数の少ない校舎なら同じ講師が上のクラスも下のクラスも指導していたりします。
クラス数の多い校舎ではそれは無理ですが、同じ講師が他の校舎では違うクラス帯を指導するのはよくあることです。
ですが、高学年なると上位クラス帯はその志望校の関係上、6年生の志望校別特訓で最難関コースを担当する講師が配属されることが多くなります。
特に最上位クラスともなると、灘コース担当の講師が通常授業も担当した方が何かと都合がいいわけです。
そうすれば、通常授業、特訓講座、志望校別特訓のすべてで灘志望の生徒を灘コースの担当講師が指導できるという環境が出来あがります。
ただし、それが出来るのは生徒数が多く、特訓講座が開講されるような校舎に限られます。
最難関コースの担当講師であっても、勤務シフトなどの都合上、下位クラスを担当することもあります。
最難関コースでは「厳しくて恐い」と言われる講師が、下位クラスでは「優しくて面白い」講師になったりするわけです。
傍から見ていても「違い過ぎるやろ!」とツッコミを入れたくなるほど変わる講師もいます。
実はそれ以外にも塾の事情というのがあります。
上位クラスの保護者ともなると「意識高い系」の人が多くなります。
それは塾にとっては「要求レベル高い系」で「クレーム多い系」ということです。
特に生徒数の多い校舎ほどその傾向が強くなります。
そこで、上位クラス帯の担当講師にはなるべく保護者対応のうまいベテラン講師を配属したりするのです。
それでも難関コース担当の講師だとクレームが来たりすることがあります。
なかなか難しいものです。
ちなみに昔、大手塾で復習テストの改定作業に携わっていたことがあります。
全校舎、全クラスの平均点を調べたりしていたのですが、意外な発見がありました。
結論を言うと、担当する講師の実力(人気、経験年数、担当コース)とクラスの平均点にはあまり相関関係が見られないということです。
テストの点数は生徒の(家庭における)努力の結果であって、誰が指導するかはほとんど関係ないのです。
この先生が嫌だから変えて欲しいとか、アンケートでわざと悪い評価をつけて変えてもらおうと考える人もいるかもしれません。
明確な理由があれば仕方がありませんが、単純に好き嫌いとかでそういうことをしない方がいいと思います。
というのも、講師配置は新年度の立ち上がりで決まります。
信頼されている講師は一度配属されたらほぼ異動はありません。
ということは、今の担当講師が外された場合、そういう「良い先生」が代わりにやってくる可能性は低いということです。
講師配置の都合とかを考えると、同時期にアンケートで外された他の先生と入れ替えるか、講師になったばかりの新人の先生を入れる可能性がけっこう高いかと思われます。
下手に先生を変えると、むしろ悪くなる可能性が高いと思った方がいいかもしれません。
ちなみに、よくクレームが出る校舎にはベテラン講師は行きたがらないです。
クラス替え
クラスアップの基準は塾によって異なります。
・公開テストなどの実力テストの順位、点数、偏差値を基準とする場合
・復習テストなど習った範囲の習熟度(点数、順位)を基準とする場合
・上記2つの合計点を基準とする場合
などがあります。
クラスを上げたいと考えている人は、自分が通っている塾の基準をしっかり把握しておく必要があります。
上のクラスの最下位の人を抜けば上がれるのか、それとも上のクラスの平均点を取らなければならないのかによっても方針が変わってくるかと思います。
クラス帯をまたいで上がろうと思ったら、少しハードルが上がります。
クラス帯が異なると受けている復習テストが異なっていたりするからです。
それが考慮されている場合、上のクラス帯には上がりにくく、下のクラス帯には下がりにくくなる作用が出てきます。
クラス替えの基準は塾全体で統一されているとは思いますが、実際には校舎ごとの都合により融通がきくことが多いかと思います。
つまり、教室数や座席数のキャパの問題、1クラスあたりの人数の問題です。
そのため校舎によって微妙にクラス替えの基準が異なることがあるわけです。
そこで、その隙をついて校舎移籍を繰り返す人もいます。
つまり、「今の校舎ではクラス落ちしたけど、あっちの校舎なら上のクラス帯に入れる」という情報を仕入れて、わざわざ移籍するわけです。
それが本人のモチベーションに繋がるというのなら好きにしたらいいと思いますが、それで肝心の成績が上がるかというとそれは別の問題ではないかという気がします。
塾での人間関係が問題だというのであればそれは選択の一つだとは思います。
志望校に関しても同じことが言えますが、なぜか合格最低点やA判定偏差値ギリギリを狙う人が多いです。
どうして最初から崖っぷちを狙っていくのでしょうか?
せめて白線の内側まで下がって待つくらいの安全性を考えた方がいいと思います。
例えば上のクラスにギリギリで上がったとします。
その瞬間は嬉しいでしょう。
ですが、新しいクラスに入った瞬間に現実を目の当たりにします。
下のクラスのトップでも、上のクラスでは最下位レベル、あるいはその下なのです。
クラスを上げるために努力をしてきたとは思います。
そしてその結果手に入れたのが「上のクラスの底辺」というポジションです。
そこから平均点まで上げようと思ったら、さらなる努力が必要です。
クラスを上げるためにやってきた努力なんて、上のクラスではみんな当たり前にやっているレベルなわけです。
上のクラスの人は運が良くてそこにいるわけではないのです。
その現実が受け入れられない人ほどメンタルに影響が出る可能性があります。
「上のクラスに上がったら最下位スタート」という覚悟をしておかなければなりません。
そしてそこから這い上がるには今まで以上の努力が必要です。
クラスを上げるためにはそういう覚悟が必要なのです。
そして、最難関中というのはその延長線上にあるのです。
クラス帯を上げるためには
まず、勉強量を増やすしかありません。
最低でも上のクラス帯と同じ量をこなしていないと勝負になりません。
亀がウサギを追い抜くための条件は「ウサギより速く進む」ことです。
みなさんの場合、特に亀のままである必要はないので、いっそウサギになってしまいましょう。
ですが、ウサギの中にも「速いウサギ」と「遅いウサギ」(途中で寝るウサギ)がいます。
勝つためには「速いウサギ」にならなくてはいけません。
どうすれば速くなるかって?
練習あるのみです。
試合に出るのに練習をしないなんて考えられません。
偏差値50の人がいきなり偏差値60を目指したとしても、3日も絶たないうちに心が折れます。
まずは手が届きそうなところを目指すべきです。
一番取り組みやすい目標としては、テストで間違えたところを解けるようになることです。
もったいないミスや、ど忘れ、やっておけばよかったと思うところをやり込むことから始めるといいと思います。
わからない問題に自力で取り組むなんていうのは、いきなり熱湯風呂に飛び込むようなものです。
ぬるま湯から少しずつ温度を上げていけば、かなり限界を引き上げることが出来ると思います。
復習テストなど宿題範囲をやり込めばクラスアップの可能性があるのであれば、まずはそこに力を入れる方が効果が見えやすいと思います。
1週間の中で、どれだけ頑張ればどこまで点数を伸ばせるのか、あるいは順位を上げられるのかに挑戦してみるといいと思います。
とりあえず1週間全力でやってみて、結果が出たらそのままのペースでいきます。
結果が出なければもう1週間全力で頑張ります。
それを結果が出るまで続けます。
※どっちにしても全力で続けることになります。
さしあたって次のクラス替えまでの期間は頑張るしかありません。
そのうち体が慣れてきます。
たくさん量をこなすとスピードも上がってきます。
そのペースが苦にならなくなる頃には上のクラスについていけるレベルに近づいているかもしれません。
つづく?
もっと具体的なアドバイスが欲しいという方もいるかと思います。
具体的なアドバイスをするためには具体的な情報が必要だということはみなさんも理解できると思います。
学年、塾名、クラス帯、現在の成績、志望校もわからない相手に対して、これ以上のアドバイスは無理です。
塾の説明会などでも同じようなことしか言われないと思います。
もっと具体的なアドバイスが欲しい、成績が上がるように指導して欲しいという方はメッセージをください。
新年度に向けて生徒募集中です。
コメントで質問していただいても構いませんが、内容が公開になることにご注意ください。
個人名、校舎名、塾内順位など個人を特定される内容は書き込まない方がいいと思います。