すぐに止めた方がいいことの第一位は「カンニング」です。
今回は「カンニング」の手口、動機、そして弊害について考えていきます。
ムイミロン
カンニング無意味論を唱える無意味論者は数多く存在します。
彼らの主張はいつもこんな感じです。
・カンニングなんかしても意味がない
その理由として、
1.カンニングで点数が取れるほど甘くない
2.バレたら全科目0点になる
3.他人の答えを写してもその人よりいい点数は取れない
4.入試本番では通用しない
5.カンニングをしても実力は身に付かない
などが挙げられます。
だから、学年が上がるとそのうちやらなくなるという理屈らしいです。
そして、カンニングを止めない人は最後に天罰が下るのだそうです。
ここでみなさんに考えて欲しいのは、カンニングをする子とムイミロンを唱える人のどちらが”お花畑の住人”なのかということです。
1.カンニングで点数が取れるほど甘くない
勉強するより簡単に点数が取れるからカンニングをするのです。
もちろん全く勉強しないというのは論外ですが、塾に通う子であればそれなりに勉強はしていると思います。
ですが、テストはそう簡単に点数が取れないように作られていたりします。
そこで闇の世界に落ちてしまうわけですね。
方法は至って簡単です。
誰かの解答を写すだけです。
もちろん、その子が間違えていたら共倒れですが、何もしないよりは可能性があります。
2.バレたら全科目0点になる
私立の中高でもたまにカンニングがバレて停学&全科目0点になったりする人がいます。
最悪、それで留年確定となり、回避するために自主退学なんていうこともあります。
塾でも「カンニングをしたら採点しません」なんて言ってますが、実際にそういうケースは見たことも聞いたこともありません。
単なる脅し文句でしかないのです。
それがわかっている子は全く怯むことなくカンニングをします。
3.他人の答えを写してもその人よりいい点数は取れない
1人の答案をそのまま写しても、その人よりいい点数は取れません。
ですが、カンニングをする側も全く勉強していないわけではないので、カンニングされた子が解けなかった問題を自力で解ければその子よりいい点数が取れます。
また、3人くらいの答案を見比べて多数決で解答を選べば、確率的に高得点が取れてしまいます。
サンプル数が多いほど確実になりますから、サンプル集めに力を注ぐわけですね。
4.入試本番では通用しない
こんなことを言う人は本番の入試でどれだけカンニングが横行しているかを知らないのでしょう。
実際に受験を経験した子に聞いてみるといいと思います。
かなり高い確率でカンニングが行われていたという証言が得られると思います。
「そんな人は一人もいなかった」なんて言っている人はカモにされている可能性が高いです。
”鉄板”の周りで頻繁に”奇跡”が起きる現象を説明できますか?
某最難関中の入試2日目に「カンニング行為は止めなさい」という趣旨のアナウンスが行われたことがあります。
そのとき受験していた子から目撃証言も含めて聞きました。
学校は”疑わしい受験生”に対して、不正行為を理由に不合格にはできません。
最悪、訴訟を起こされかねないからです。
答案を覗く行為は物的証拠がないため立証が難しく、仮に録画をしていても答案を写したという証拠にするのは難しいと思います。
答案用紙を見比べても断定できる証拠にはなりません。
つまり、本人の自白がなければ成立しにくいのです。
対策としては、机の距離を離すとか、試験監督を増員するくらいしかないと思います。
ですが、受験者数の多い学校ではそこまでやるのは手間がかかります。
そもそも、学校側が「カンニングは入試本番では通用しない」なんていう考え方を持っていたら、対策は皆無だと思っていいでしょう。
「入学後に困る」とかいう意見もありますが、カンニングがバレなければきっとうまくいきます。
全く勉強しない子がカンニングだけで合格するというわけでもないので、最悪の場合、自力でもついていくことはできるでしょう。
それよりも、その不正行為によって誰かが不合格になることが問題です。
「入学後に困る」なんて言っても、やっている子には全く響かないと思います。
5.カンニングをしても実力は身に付かない
今回、一番言いたいのがここです。
カンニングをしているとどうなるのかという話です。
例えていうなら、カーナビですね。
カーナビがないと運転できないという人が一定数存在します。
ナビが教えてくれるので、自分で道を覚えたりする必要がありません。
どこで高速を降りるのか、どこで交差点を曲がるのか、どこが渋滞するのか、そういう判断はすべてナビ任せになります。
ナビさえあれば全く問題はなく、むしろナビのおかげで車で外出できる人が増えたと考えていいと思います。
ですが、もし「ナビが使えない状況」になったら、この人は何もできなくなる可能性があります。
つまり、思考力、判断力、決断力がいつまで経っても身に付かないということになるのです。
カンニングの主な手口
私の経験上、多いと思われる順に紹介しましょう。
1.他人の答案の覗き込み
これはテスト中に他人の答案を覗き込む行為全般を指します。
答えを写すだけではなく、自分の答えと照らし合わせる行為(通称:答え合わせ)も同罪です。
最も覗き込みやすいのはその子から見て左斜め前の席でしょう。
多くの人は左側に問題用紙、右側に解答用紙を置きます。
前の席や右斜め前の席も角度とタイミングによっては丸見えです。
両隣の席を覗き込むのはハイリスクです。
どうしても頭を横に向けないと覗き込むことができないので、バレやすくなります。
ベテラン試験監督ならすぐに気が付くと思います。
正面から見れば目線でわかりますし、後ろからでも不自然に頭が上がるので一発です。
そこで、彼らは試験監督が通り過ぎるタイミングを見計らって大胆に横を見ます。
2.トイレ1(机間巡回)
テスト中にトイレに行きたがる生徒がいます。
だいたい毎回同じ顔触れです。
彼らはテスト終了10分前くらいになると活発に動き出します。
トイレに行く許可が貰えたら、ゆっくりと教室を出ていきます。
そのときの仕草は机間巡回する試験監督とそっくりです。
で、帰りは必ず行きとは違うルートを通って帰ってきます。
場合によっては不自然に大回りします。
3.トイレ2(トイレの花子さん)
トイレに行くときに答案を覗くだけではなく、トイレでカンニングペーパー等を見るケースです。
復習テストの過去問などを持っている子の場合、それを確認するためにわざわざトイレに行くのです。
トイレにあらかじめテキストやノートを仕込んでおくケースもありました。
これは公開テストなどの実力テストでは使いにくい方法です。
4.トイレ3(談合)
テスト中のトイレは原則1人ずつなのですが、それはトイレで情報交換が行われるのを防ぐためです。
公開テストのときは教室のモニターを見ている担当責任者が各教室の試験監督に指示を出して順次トイレに行かせます。
復習テストの場合、”テストの先生”の管理が甘いとトイレで談合が行われたりします。
5.カンニングペーパー
これはレアケースですが、復習テストの過去問の解答を持っている子が実際にカンニングペーパーを持ち込んでいるところを押さえました。
いつもテスト終了5分前くらいになるとトイレに行くので”机間巡回”を警戒していたのですが、どうやらペーパーの処分のためにいっているらしいというタレコミがありました。
6.往生際
テスト終了の合図があったら鉛筆を置くというのがルールですが、そこから10秒くらいが正念場です。
その時間に不正が行われるのです。
テスト終了で気が緩んだ人の答案が丸見えになります。
それを一気に書き写すのです。
といっても数問が限界だと思います。
答案回収までの間、常にチャンスを窺っている子もいるので要注意ですね。
7.相互採点
最近は感染予防のためになくなったりしていますが、復習テストを相互採点させている塾もあります。
もちろん、最終的には講師が採点するのですが、相互採点により点数の速報値が出せるというメリットがあるのです。
そのときに不正が行われたりします。
合っているのにわざと×をつけたり、間違っているのに〇をつけたりするのはよくあることですが、これは講師採点で修正されるので単なる嫌がらせ目的や馴れ合いでやっているのでしょう。
悪質なのは答案の書き換えです。
間違えているところを修正するのです。
2人でグルになってやっているケースもあります。
8.ツイート
テスト中に合図を送るという例もありました。
テスト中の私語は厳禁ですが、管理の甘い”テストの先生”の場合、生徒は好き放題につぶやきます。
それに対してリツイートが付くわけですね。
それがヒントになっているわけです。
9.灰色領域
これはグレーゾーンですが、テストの過去問を持っている子がその解答を覚えてきて、毎回満点に近い点数を取るという行為がよく行われています。
塾としては年度によってテストのパターンを変えてはいるものの、コストの関係で使い回しをしなければなりません。
毎回満点だと目を付けられる可能性があるので、わざと1~2問間違えるという手の込んだことをする子もいます。
ですが、実力テストの成績とあまりに乖離しているので発覚するというケースが多々あります。
仮に新作のテストであっても校舎によって実施日に差が出るので答案が流出するケースもあります。
他校舎に知り合いがいないと難しいですね。
テスト中のカンニング行為ではありませんが、不正行為の一種と考えていいと思います。
いわゆる入試問題の「過去問」とは全く意味合いが異なります。
対策法
有効な対策法はないと考えた方がいいと思います。
いくら塾に申し立てたところで、塾も訴訟沙汰は避けたいので迂闊に注意もできないのです。
テスト中に名指しで注意すれば「名誉棄損」になりますから、全体に向けた注意しかできません。
きつく注意すれば「暴言」などとクレームが入るので、優しく諭すような言い方しかできません。
隣の子の答案を覗きこんでいても、「テスト中によそ見をするのは止めましょう」くらいしか言えないのです。
席を離すというのは物理的に限界がありますが、塾サイドの唯一の対策は席替えです。
最前列の角とか、周りに生徒が少ない場所に座らせるのが一つの方法です。
ですが、それでは一度に2人しか対処できません。
公開テストなどでは、疑いのある子は優秀な子から離すという対処法があります。
そうやって少しずつ成績が下がっていき、下のクラスに落ちてしまえば周りに優秀な子はいなくなるので、カンニングだけでは二度と上がってこれなくなるわけです。
「先生、俺なんでいつも最前列なんやろ?」
それは企業秘密ですw
この対策法は逆に使うと黒魔術になります。
つまり、カンニングの疑いがある子を優秀な子で囲めば、最難関校に合格する可能性が出てくるわけです。
そんなことを考える塾講師黒魔術士も存在します。
ただ、その子が周囲から嫌われていて完全にブロックされたなんて話もあります。
ブロックとは
答案がその子に見えないように配置することです。
記入するとき以外は問題用紙の下に隠し、隠しながら記入します。
その子の成績が上がれば、相対的にみんなの成績(偏差値)は下がります。
その子のクラスが上がれば、代わりに誰かがクラス落ちします。
その子が合格すれば、代わりに誰かが不合格になります。
率
どれくらいの生徒がカンニングをしているのか、私が独自に調査した結果を教えます。
結論を先に言うと、
・上位クラスほど高い
・学年が上がると低くなる
ということです。
小4上位クラス帯の場合、私が見てきた限りでは5~6割くらいでしょうか。
下位クラス帯では2割以下でした。
それはそれで、もう少しやる気を見せて欲しいとさえ感じます。
小5上位クラス帯の場合、4~5割くらいです。
小4から淘汰された結果ではないかと思います。
それが下のクラスに流れていきます。
下位クラス帯で3~4割くらいです。
小6上位クラス帯の場合、2~3割まで減ります。
中間クラス帯でも3~4割程度、下位クラス帯は1~2割です。
特に上のクラス帯にあと一歩とか、受講資格まであと少しという立ち位置の生徒の率が高くなります。
また、逆に落ちるかどうかのギリギリのラインでも率は高くなります。
成績が安定している人や各クラスのトップ層は率が低いです。
そもそも周りの成績が低かったらカンニングはデメリットしかありません。
保護者の圧が強い子ほど率が高くなります。
特にクラス替えで塾の存続が決まるというような崖っぷちの子にとっては死活問題なのです。
生徒の成績が急上昇したとき、基本的にベテラン塾講師ならまずカンニングを疑います。
偏差値5ポイントくらいなら通常の変動幅ですが、平均値よりも10ポイントとか一気に上がるとダウトですね。
確率的には1%未満なのです。
平均偏差値50の子が偏差値60の学校に合格するなんて概算で約30万分の1くらいの確率です。
今回の主題
カンニングが良くないというのは誰でもわかる話だと思います。
ですが、それが横行しているというのはあまり知られていません。
でも、そんなことはどうでもいいのです。
問題は、カンニングが習慣化すると思考力、判断力、決断力が弱くなるということです。
つまり、自分で出した答えに自信が持てない、合っているかどうかわからない状態になるということです。
それが進行すると、答えを書けなくなります。
間違えたくはないからだと思います。
書いて「間違える」よりも、書かずに「わからない」とした方が責任が軽くなると感じているのでしょう。
間違いは自己責任ですからね。
わからないのは「教える人」のせいにできます。
実はカンニング以外にも、同様に思考力、判断力、決断力が弱く可能性があるものがあるのです。
それが、「すぐに答えを見る」という行為です。
テスト中に答えを見るのはカンニング行為ですが、それ以外では特に何のお咎めもありません。
例えば宿題をやっているときに、わからなくなるとすぐに答えを見る人が多いです。
もちろん、塾でそう指示されている可能性もあります。
わからないまま無駄に時間を掛けるよりは、さっさと次に進んだ方がいいという判断ですね。
わからない原因が知識不足である場合、解答を見て覚えるのが最も効果的です。
そもそも覚えていないのに問題を解くのが正しいかと言われると、「間違っている」としか言えません。
ケース1
問題を解き終わったらすぐに解答・解説を見る。
合っていたら次に進み、間違っていたら答えを修正。
ちゃっかり丸を付けて終了。
ケース2
わからない問題があったらすぐに解答・解説を見る。
そして、その答えを写して終了。
間違えた問題は解答を写して終了。
ケース3
わからない問題があったらすぐに質問する。
それをそのまま書いて丸付けする。
ちゃっかり丸を付けて終了。
ケース4
問題は解けているが、答えを書く前に解答をチラッと確認する。
もしくは、丸付けの前に解答をチラッと見て、間違っていたら修正する。
ちゃっかり丸を付けて終了。
これが癖になっている人は要注意です。
塾講師でもたまにいるのが、
・テキストに解答を書き込んでいてそれを見ながら授業をする講師
・そもそもテキストに書いてある通りに授業をする講師
・しっかり予習をしてきているが、ノートを見ながら授業をする講師
板書だけは完璧です。
ミスがないのでクレームもないでしょう。
ですが、生徒の見ている前で解いたりしないので、そこが弱くなります。
急に質問を持ってこられると対応できません。
初見で問題が解く自信がありません。(解けないわけではないと思います)
テキストやノートを忘れると授業ができません。(忘れなければいいという話ですが…)
ミスをしたときの対処法を知りません。(フリーズします)
「ナビ頼り」の典型ですね。
一見雑に見えるベテラン講師で、しょっちゅう計算ミスをしたり、誤字が多い人がいます。
ですが、こういう人の方が実力を持っていたりします。
難易度の高い問題になると本領を発揮します。
テキストを忘れてきたりしますが、内容が頭に入っているので必要ありません。(だから忘れる)
些細なミスは多いですが、逆に言うとミスするパターンは熟知しています。
ナビなど使わずに、「自分で道を切り開く」タイプですね
いざというときにミスさえしなければ完璧だと思いますが、それが塾講師たる所以なのかもしれません。
まとめ
すぐに解答を見るのをやめましょう。
※解答を見るのをすぐにやめるのではなく、「すぐに」見るのをやめるという意味です。
親が丸付けしてあげるのが理想です。
どこが間違ったかは教えてはいけません。
アドバイスもしてはいけません。
自力で解かなければ何の意味もありません。
3回くらいチャレンジして、最後に降参したら教えてあげてもいいと思います。
それを続けていくと、自分で答えを見つける力が付いてきます。
もしくは時間が足りなくて宿題が全然進まなくなります。
でも、それが本来の実力なのです。
ですからそれに合った対策が必要です。
今ならまだ間に合うかもしれません。
すぐにやめましょう。
「意味がないことはやらない」という人がいます。
その行為に意味はあるのでしょうか?
意味がないのなら「意味がないことはやらない」というのはやめた方がいいと思います。
意味がないものはとりあえずそのまま覚えておくのが基本です。
「それって意味ありますか?」
それは自分で考えてください。