中学受験を目指すみなさんにとって一番気になるのは偏差値ではないでしょうか?
毎月公開テストが終わるたびにドキドキしながら成績を見て、残念な気持ちになる人も多いかと思います。
特に6年生ともなると、何か特訓講座を取るにも、志望校別特訓を取るにも、受験校を選ぶにもこの偏差値が必要となってきます。
それほど大事な偏差値ですが、案外その仕組みがよくわかっていない人が多いのです。
塾講師でも偏差値の仕組みについてはあまりよくわからないという人がけっこういます。
そんな「偏差値」について考えてみましょう。
偏差値とは
その集団の中での立ち位置を示す数値です。
ちょうど平均点だと偏差値50となり、点数が高いほど偏差値も高くなります。
テストを受けた受験者全員を母集団と言います。
大手塾の場合、基本的に塾生全員が同じテストを受けるので、塾生全体が母集団であると考えます。
テストごとに受験者数は多少変動しますが、塾生数が多いほどその影響は少ないので、ほぼ毎回同じような分布になると考えていいでしょう。
世間でよくある勘違いの一つですが、他塾の偏差値を気にする人がいます。
塾によって志望校の偏差値が違うといった話です。
各塾が独自に塾内模試を実施しているわけですから、その母集団は塾ごとにことなります。
塾ごとの学力差は塾の指導力による影響も考えられますが、それ以前に入塾テストのレベルが大きく影響します。
もちろん、塾の経営方針の違いにより集まってくる生徒の意識もかなりの差があります。
その結果、各塾の平均レベル(偏差値50の学力)にはかなりのバラツキがあります。
他塾の偏差値表を参考にしたいのであれば、その塾の模試を受験する必要があります。
多少の慣れも必要なので、3回くらいは受けてみないと実力を判断するのは難しいです。
偏差値の計算方法
偏差値を求める公式:自分の偏差値=(自分の得点-平均点)÷標準偏差×10+50
※得点が平均点より低い場合はマイナスとなります。
最後に50を足すのは、平均を偏差値50とするためです。
標準偏差とは
まず、自分の得点と平均点の差を考えます。
これを偏差といいます。
自分の偏差=自分の得点-平均点
ちなみに、全員の偏差を合計していくと0になります。
なぜなら、平均点は全員の得点を合計して人数で割ったものだからです。
全員の偏差の合計=全員の得点の合計-平均点×合計人数=0となります。
そこで、この偏差を2乗します。
2乗することで、平均点との差がより大きくなります。
それを全員分合計したものを分散といいます。
分散=(各自の偏差)の2乗 ÷ 合計人数
分散の平方根をとったものが標準偏差です。
標準偏差=√(分散)
で、ここまで説明するとほとんどの人が脱落します。
標準偏差
これだけ知っておけばとりあえず何とかなります。
・塾の公開テストの標準偏差はだいたい15~20くらい。(100点満点の場合)
・平均点くらいの点数で偏差値50前後
・(平均点+標準偏差×1)くらいの点数で偏差値60前後
・(平均点+標準偏差×2)くらいの点数で偏差値70前後
・(平均点-標準偏差×1)くらいの点数で偏差値40前後
つまり、標準偏差1つ分が偏差値10ポイントに相当するということです。
逆に言うと、今の偏差値を10ポイント上げるのに、あと15~20点必要ということになります。
偏差値1ポイントあたり1.5~2点ですね。
塾のテストでは標準偏差を教えて貰えません。
そこで自分の偏差値から標準偏差を逆算する方法を試してみましょう。
(自分の偏差値-50)と(自分の得点-平均点)が比例するわけです。
そこから偏差値1ポイントあたりの点数を計算します。
(自分の得点-平均点)÷(自分の偏差値-50)=偏差値1ポイントあたりの点数
これを10倍すると標準偏差になります。
標準偏差=(自分の得点-平均点)÷(自分の偏差値-50)×10
ただし、塾の成績表の数値(自分の偏差値、平均点)は小数第2位を四捨五入して小数第1位までの値になっています。
ですから、多少の誤差は出ます。
最近はどこの塾でも、「あと〇〇点で偏差値〇〇」などという一見何の意味もなさそうな文言が書かれていたりしますが、これはそういう計算をしているのです。
ちなみにそんな情報を貰ったところで今さら成績が上がるわけではありませんが、「ただただ残念な気持ち」と「次は行けるのでは?」という期待感を煽っているのです。
それを励みに頑張りましょうということですね。
正規分布
正規分布という言葉があります。
統計学の用語ですね。
同じ授業を受けている全生徒に同じテストを受験させた場合、テストの問題バランスが良ければその得点分布は綺麗なベルカーブ(平均点付近が一番高く、なだらかな山の形)になります。
その最も理想的な形が「正規分布」です。
得点分布の表は成績表と一緒に却って来ますから、じっくり眺めてみましょう。
各偏差値帯と人数分布(正規分布)
(全体を100%とした場合、●1つが1%)
70~** ●●
65~70 ●●●●●
60~65 ●●●●●●●●●
55~60 ●●●●●●●●●●●●●●●
50~55 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
45~50 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
40~45 ●●●●●●●●●●●●●●●
35~40 ●●●●●●●●●
30~35 ●●●●●
**~30 ●●
ところが、実際の塾の得点分布はこんなに綺麗な形ではありません。
特に算数でよく見られるのが、山が2つある形(ふたコブ)です。
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この場合、偏差値の分布はどうなるのでしょうか?
正規分布と比べて多くなっている偏差値帯は理論値よりも人数が多くなります。
この場合だと真ん中が少ないので、偏差値50前後は理論値よりも人数が少なく、偏差値40台と偏差値60台が理論値よりも多くなります。
最難関志望の一つの目安とされる偏差値60(塾によって差があります)以上ですが、理論上は上位16%です。
しかし、得点分布がふたコブの場合、偏差値60以上の人数が全体の20%を超えてしまうこともあります。
塾としては最難関志望が多い方が都合がいいのです。
というのも、最難関向けの特訓を積む生徒が多ければ、最終的に最難関を諦めても難関上位校に合格する子の割合が多くなります。
つまりは全体の平均を引き上げてくれるということです。
ただし、その結果がふたコブになる原因でもあります。
チャンスは2~3回?
塾では受講資格が必要な講座が設置されていますが、過去2~3回のテストで1回でもクリアしていたらOKということになっています。
もちろん毎回クリアしている子と1回だけクリアした子では学力差がありますが、そこはクラス分けでどうにかなるので構わないのです。
では、どうしてそんなにチャンスがあるのでしょうか?
例えば、今回のテストで偏差値60を取った人がいるとしましょう。
その人が来月も偏差値60を取れるかというと、それはわかりません。
毎月同じような成績を取る人もいれば、上がったり下がったりを繰り返す人もいます。
上がり続けた人はいつか下がり始めますし、下がり続けた人もいつか上がり始めます。
それが来月も続くかどうかはやってみないとわかりません。
サイコロ1個を振ったときの出目の期待値は3.5ですが、どの目が出るかはわからないのです。
ですが、サイコロ100個を同時に振ったら、出目の合計は350に近い値になると思います。
塾としては個々の生徒の成績を予測するのは難しいのですが、塾生全体で考えたら16%くらいは偏差値60を超えるだろうという予測が出来ます。
A判定(合格可能性80%)の生徒が受験をしたとして、合格するかどうかは正直予測できません。
合格する可能性が高いだろうなとしかわからないのです。
ですが、コース生のうちA判定の100人が受験すれば80人くらいの合格は見込めるわけです。
悪くても70を切ることは滅多にないでしょう。
個々の生徒の予測が難しい最大の原因は、学力が安定していないということです。
得意科目・分野、苦手科目・分野があって、当日の体調やメンタルの影響を受け、うっかりミスをするからです。
つまり、1~6の目のサイコロを振るから何が出るかわからないのです。
トップ層の生徒のサイコロの目は6しかないので、安定して6が出ます。
過去半年間の偏差値で1回でもA判定を切っている人は不合格になる可能性があるということです。
ということは、今からサイコロに細工をしてすべての目を6にしてしまえばいいということになります。
7月~12月の半年間ですべてA判定をクリアできるように、対策をするということですね。
来週末から春休みが始まります。
教育相談、春休み中の指導を希望される方は早めに連絡ください。
とりあえずはメッセージで。