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瞬殺!のマジック

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最難関レベルの中学を目指す子がときどき問題を解きながら口にするのが「瞬殺!」という言葉。

一瞬で問題を解くことを意味します。

一瞬といっても問題文を見て、解答を書くまでに数秒はかかりますから、トータルで10秒以内くらいで解けたら”瞬殺”ですね。

「秒殺」というのもありますが、これも10秒未満くらいで解けるという意味で使います。

たとえ5分かかったとしても秒に換算すれば300秒ですから、「秒単位で解いている」と言っても間違いではありませんが、「秒殺」ではありませんね。

 

さて、この「瞬殺」とか「秒殺」というのは講師もよく使います。

そこに隠されたプロの努力と意地を少し紹介しましょう。

 

塾講師というのは大学生もしくは大卒(必ずしも卒業していなくてもよい)であれば基本的に誰でもなろうと思えばなれる職業です。

ですが、中学受験というのは高校受験と比べてかなり難易度が高い世界ですから、大手塾の講師になろうと思うとそんなに簡単ではありません。

まずは採用試験を受けて合格点を取らなければなりません。

採用試験は生徒(小6)が受ける公開テストなどと同レベルのもので、希望する科目を1つ受けます。

合格基準はだいたい6割程度だと思います。

つぎに面接(模擬授業)を受けて、講師になれそうな人物だと判断されれば合格です。

そこから見習い期間が始まります。

准講師(テスト業務を行う先生)を続けながら(半年~1年)授業見学をし、勉強会(模擬授業)を重ねていきます。

最後にテストと経営陣の前で模擬授業を行って、合格すれば講師になれます。

ここまでの流れは専任講師も非常勤講師(大卒・院生・学生のアルバイト)も同じです。

(私が勤めていた塾の場合です)

 

おそらくほとんどの講師はこの時点では学力・スピードで最難関レベルの生徒には勝てません。

最難関レベルの生徒を指導できるようになるには、少なくとももう2~3年はかかります。

1年目で小4・小5を指導し、2年目で小6、その間に最難関コースで見習いを経て、早くてその次のシーズンからですね。(未経験者の場合)

 

大手塾の生徒は長年塾に通っていますから、講師を見る目も肥えています。

実力のない講師だとわかると完全に舐めてかかります。

下手をするとアンケートで授業を降ろされてしまいます。

特に計算が遅い、問題を解くのが遅い先生とか、テキストの解説通りの授業しかしない先生、質問に即答してくれない先生は嫌われることがあります。

 

わざと難しい問題(過去問や特訓教材)などを質問に行って先生をいじめる生徒もいます。

実はそれはぜひどんどんやった方がいいんです。

そうやって若手講師は鍛えられていくんです。

先生同士でも休憩室で問題を解く勝負をしたりしているんです。

 

 

トップレベルのクラスで生徒からの信頼を得ようと思ったら、「この先生凄い!」と思われなければなりません。

そこで出てくるのが「瞬殺!」なのです。

 

生徒が5分考えてもわからない問題、家でじっくり考えても、解説を見てもよくわからない問題、それを生徒の目の前で一瞬で解いてみせるわけです。

 

「瞬殺」できる問題とできない問題があります。

図形の問題や規則性の問題などでは、これさえ知っていたら瞬殺できるという問題が入試でもよく出題されます。

反対に、ひたすら計算したり、書き出しをしないと解けない問題もあります。

それをどのように解説するのかが講師のテクニックなのです。

 

 

準備

 

授業というのはある種のエンターテインメントです。

いかに生徒を惹きつけ、いかにあざやかなパフォーマンスを見せるかが重要なのです。

そこで仕込みは欠かせません。

 

テキストの問題を予習するのは当然ですね。

生徒の前でつっかえたり、間違えたりしたら「事故」です。

当然、問題は全て頭に叩き込みますし、図を描く練習もします。

 

まずは自力で問題を解いてみます。

何度も図を描き直したり、計算し直すこともあります。

たまに難しい問題だと解くのに10分くらいかかることもあります。

でもそれでは授業になりませんから、どうやって時間を短縮するか考えるのです。

解説の解き方はだいたい一般的な解き方なのですが、それをそのまま授業でやったらダメ講師です。

そこで何とか手数を減らす解き方、計算の短縮方法を探します。

答えから逆算して考えることが多いかもしれません。

最終的にこうなるのならこの手が使えるとか、この問題と同じパターンだとか、数学の公式は使えないかとか考えるのです。

 

そうして出来上がった解法が「必殺技」なのです。

汎用性の高い技だと誰かが呼び名をつけたりします。

「てんびん法」とか「和分の積」なんていうのは有名ですね。

 

 

テクニック

 

図形の問題なんかは補助線を1本引けば瞬殺出来る問題がよくあります。

しかし、これを授業で見せるにはテクニックが必要です。

実は最初に図を描くのに時間がかかるんですね。

そこで、最初は問題を説明したりしながらとにかく先に図を描いてしまいます。

準備ができたらいよいよここからが技の見せ所です。

「いいか?一瞬だぞ!」

とか言いながら線を引きます。

「おお!」

と歓声が聞こえたら大成功ですね。

 

計算がめんどくさい問題とかの場合は、ポイントとなる式を作るところまでが勝負です。

「ここをこうするとこういう式になります」

「おお!」

で、あとの計算は時間がかかるので「QP3分間クッキング法」を使います。

「ここを計算するとこういう答えになるから、あとはそれを式にあてはめて計算します」

とかいいながら計算を飛ばします。

「で、答えはこうなります。」

「おお!」

 

 

ヒント

 

問題を解かせているときにたまにヒントを出します。

わからなくて悩んでいる生徒に、

「この問題は瞬殺!」

と教えるのです。

上位クラスだと、だいたいそれだけで何を言っているのかわかってくれます。

瞬殺できる問題ということは、何かの技が使えるということです。

そうすると使える技は限られていますから、それを見つければいいのです。

 

すぐに誰かが「わかった」とか言います。

そうするとそれを聞いた周りの子も、あいつがわかるなら自分もわかるはずと思って考えます。

ですからテスト中はそういう言葉を口にしてはいけません。

それだけで重要なヒントになってしまうのです。

 

 

 

というわけで「瞬殺」ができるまでには入念な準備とテクニックが必要なのです。

それを見た子供が家に帰って真似をしようとしてもそう簡単にできるものではありません。

3分間クッキングも実際は10分の放送枠ですし、それを見て真似をしても3分では作ることができないのと一緒です。

 

ただ、その解法を知っているとかなり短時間で問題が解けるようになることは間違いありません。

あとはそういう解法をひたすら数多く覚えるだけの簡単な作業です。

 

ちなみに塾の先生に、

「どうやったら一瞬で解けるようになるんですか?」

と聞くと、だいたいこう答えると思います。

「ヒラメキです。」

(↑瞬殺!)

 

 

 

 

「そんなの瞬殺ちゃうやん!」というツッコミはご遠慮ください。

 


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