ここ最近、「母親は女優になれ」というのが流行っているようです。
もちろん、女優として芸能界にデビューしろということではありません。
受験生を持つ母親の心構えとして、「理想的な母親を演じる女優になれ」ということを言っているのだと思います。
数年前までは、「母親はマネージャーになれ」みたいなのが流行っていました。
それが完璧に出来れば子供を全員東大理Ⅲに入れられるかもしれないという夢のようなお話です。
そして、出版⇒ベストセラー⇒テレビ出演⇒講演会というサクセスストーリー。
真似をしようと思うとかなりハードルが高いですね。
親に求められる能力が半端ではありません。
多くの人が挫折したのではないでしょうか。
それ以前はどうだったのでしょうか?
「親は子供の体調管理」
みたいなことは昔から言われています。
一体誰がそういうことを言うのか、発信源を辿っていくと塾なのです。
塾の説明会などで刷り込まれてくるのです。
塾講師の立場で考えてみましょう。
親が子どもの心配をするのは当然なのですが、だからといって余計なところまで口を出されると面倒なことになります。
例えば宿題のやり方、復習のやり方、ノートの取り方などを塾で説明されるかと思います。
塾としては長年の経験から、その子の学力に合った最も効果的な方法でやらせたいのですが、親が勝手に違う方法でやらせてしまうとたまに不具合が生じます。
そこで、いかにそれを阻止するかがポイントになります。
特に問題の解き方に関しては塾によって方針が異なることがあります。
塾の先生とは異なる解き方をしていると、授業や解説を聞いても全く理解できないことがあるのです。
クラス帯によっても解き方が異なることもあります。
作業効率を考えたらこの解き方、汎用性を考えたらこの解き方、というようにいくつもの解法やテクニックが存在します。
親が違う解き方を教えることは悪いということではありませんが、それ以外の解法を否定するのは問題です。
そういった混乱を避けるために、塾としてはなるべく塾のやり方でやって欲しいわけですね。
つまり、親に余計なことをして欲しくないのです。
そこで親に何か別の目標を与えることで親の気をそらそうというのが塾の戦略です。
それが”体調管理”であり、”マネージメント(勉強以外)”であったのでしょう。
そんな流れの中で”女優”というのが出てきたのではないかと思われます。
親は子供の前で演技をしろということですね。
例えば、子どもの学習態度に腹を立てていても決して感情的にならずに論理的に対応するとか、
成績が悪くてもむやみに叱責するのではなく、原因究明と再発防止のためにやさしく対応するとか。
つまりはイラッとくる感情を押し殺して、いかに知性的で論理的で子どもを想うやさしい母を演じられるかということだと思います。
でも勉強は教えなくていいんです。
子どもが悩んだり落ち込んだりしたときにどうやって元気づけるか、そういうことではないでしょうか。
でも女優になるってそんな簡単ではないと思うんです。
関西人ならついつい笑いを取りたくなるかもしれません。
もし笑いを取りに行ったらそれは女優ではなく女芸人です。
子どものやる気を引き出すどころか、下手をしたらダダすべりです。
それでも子どもが「勉強しないとやばい」と思ってくれたらある意味成功です。
「私のことは嫌いでも、勉強は嫌いにならないでください!」
なんてアイドルみたいなことを言う必要はありませんが、
それくらいの覚悟は必要かもしれません。
勉強にしろ、マネージメントにしろ、演技にしろ、素人が下手に手を出すと痛い目に遭う危険性があります。
本人は真剣にやっているのかもしれませんが、見ている方がただただ「痛い」と感じることがあるのです。
あくまでも「比喩」だということを理解しておいた方がいいと思います。
長い前フリでしたが、最後に動画をお届けします。
ドラマ「Q10」(2010年 平均視聴率10.9%)より