子どもの宿題ノートなどを見ていて心配になる人も多いかと思います。
算数の宿題で、ノートに答えだけしか書かない子がけっこう多いのです。
多くの大人は、式やとちゅうの計算は書かなければならないと思っています。
学校でそのように教わってきたからです。
書けと言われなくても書いた方が解きやすく、ミスも少なくなるということを経験的に知っている人も多いでしょう。
そこで、「ちゃんと式や図をかきなさい」と注意するのですが、素直に言うことを聞く子はあまりいないのが現実です。
式や計算は書かないといけないのか?
まずは大事なポイントを押さえておきましょう。
入試や模試で式や計算を書かないといけないのでしょうか?
それはその問題の出題形式によります。
問題文で「式や途中の計算を書きなさい」という指定がある場合、これは式や計算を全く書かなければ不正解(もしくは大幅な減点)となります。
したがって、得点しようと思うのであれば指示に従うほかはありません。
では、指定がない場合はどうなのでしょうか?
これは解答欄を見て判断することになります。
解答用紙に(式)とか(解き方)などの記載がある場合、もしくは欄が設けられている場合はやはり書かないと不正解もしくは減点の可能性が高いです。
問題文ではなく、問題用紙の初めのページや、問題冊子の表紙などに書かれている場合があります。
ただし、(計算欄)と書かれている場合は使わなくてもよいと考えていいと思います。
解答用紙に解答欄しかない(式を書くのに十分なスペースはない)場合も多いです。
おそらく解答欄には解答のみを記入しなさいと指定されていると思います。
この場合は、式を書いたら不正解となります。
漢字指定ではない語句の問題などで、漢字とふりがなを両方書く人がときどきいます。
漢字を間違えても、ひらがなが合っていたら点数が貰えると思っているのかもしれません。
しかし、一般的にこれは不正解となります。
解答欄に答えを2つ書いたという判断になるからです。
※正解とされる場合もあります。(採点基準によります。)
テストでは原則として、指示に従っていない解答は不正解とされます。
どのような指示をされるかは学校によって多少異なりますが、だいたい毎年同じ形式で出題されるので、過去問などで確認しておく必要があります。
なぜ式や計算を書かせるのか?
学校によっては、解答が間違っていたり空欄であっても、式や計算が途中まで合っていたら部分点をくれます。
もちろん何でもいいから書けばいいというわけではありません。
問題ごとにポイントがあって、この式が出ていたらOKとか、ここまで計算出来ていたらOKという採点基準が設けられていると思われます。
採点基準はあらかじめ決められていますが、別解などが出た場合や、あまりに正答率が低い場合など、テスト終了後に採点者会議で基準が変更になることもあります。
その場合は、該当する問題について全受験者の答案を再度採点し直すことになります。
受験生に不公平がないように、少しでも点数が取れるようにという配慮ですね。
そんな話を聞くと生徒思いの良い学校のように思えるかもしれません。
(生徒のことを考えない学校などないと思いますが)
ですが、受験生はまだその学校の生徒ではありません。
学校にはそれなりの理由があるのです。
●不正防止
解答のみのテストだと不正が行われやすくなります。
他の受験生の答案を見て答えを写すカンニング行為が容易になります。
ランダムに解答して的中する可能性が高くなります。
つまり、勘で書くというやつですね。
実力で解いていないので、本来のテストの目的から外れる行為です。
●部分点
部分点を与えるのは算数や国語の記述問題です。
配点が高い問題では差がつきやすくなるわけですが、問題なのは得点分布なのです。
塾の算数のテストなどでは1問4点や5点のものが多くなりますが、これだと同点がたくさん出ます。
1点差で合否を分ける入試では、合格最低点付近に同点が多いと合格者数の調整に困るのです。
そこで、なるべく得点分布が滑らかになるように部分点を与えたいわけです。
(問題を増やすと平均点が下がるので逆効果です。)
そこで、式や計算のところで加点や減点をして差をつけるわけです。
●難易度
一般的に式や計算を書かせる問題は難易度が高いものが多くなります。
実力がない人は部分点さえも取れないのです。
その一方で単純な計算ミスや解答ミスなどは部分点で救済されます。
より実力が評価される問題であると考えていいと思います。
答案は解答のみのテスト
式や計算を全く書かせない学校も多く存在します。
いわゆる難関校、併願校などと呼ばれる学校ですが、共通点は受験者数が多いということです。
受験者数が多いと採点業務が大変になります。
翌日には合格発表という学校が多いため、徹夜作業になることもあります。
一般に採点が面倒な国語を最初の科目にする学校が多いです。
(3科4科アラカルトの学校は社会を最初か最後にします。)
塾の公開学力テストなども受験者数が多いので、基本的に解答のみのものが多いです。
小6になると学校別のプレテストなどが行われますが、その場合は志望校の形式に合わせたものになります。
そのようなテストでは”空欄を残さないように適当に埋める”という戦術がよく使われます。
得点できる可能性は低いですが、何も書かないよりはわずかに期待値が上がります。
また、得点を上げるためには計算過程よりも処理速度が求められます。
時間が足りなくて問題を解き切れないよりも、多少精度が落ちても処理を省くことで問題数を稼ぐ方が有利になることがあるからです。
※あくまでもテスト中の話ですから、家での勉強とは状況が異なります。
塾の指導方法
式や計算を書かせるかどうかは塾によって、あるいはクラス帯によって指導方法が異なります。
近畿圏の大手塾はなるべく簡単な式や計算は省いて、処理速度を求める傾向があります。
計算力がない子が真似をしようとするとかえって時間がかかってしまうかもしれません。
その一方で、図を描くことを強く求められます。
これも慣れていない子は時間がかかってしまいます。
特に最難関レベルの学校を目指すのであれば、塾の方針をよく理解したうえでそれに従っていく必要があります。
学年が上がったり、担当者が変わると急に言うことが変わったり、解き方が変わることもありますが、それに順応しなければなりません。
テスト中に難問に遭遇したときは、どの方法で解くのがいいかをその場で迅速に判断しなければなりません。
そのためには複数の解法を身につけておく方がいいという考え方が根底にはあるのだと思います。
式は書かなくていいとか、書くなとまで言われることもあるかもしれませんが、それはもちろん書こうと思ったら書けることが前提となります。
初めて習う単元や初めて解く問題は式をしっかり書いていく方がいいのです。
2回目以降は省いてもいいところは省いていきます。
どこを省いたらいいかの判断は経験が必要ですが、テキストの解説と同程度に省いてもいいとは思います。
なるべく括弧など使って、1つの式にまとめていく力が要求されます。
図を描かせるのはイメージを視覚的に捉えるため、あるいは図形の性質を利用して解く(ダイヤグラムなど)などの理由があります。
普段から描かせるのは慣れさせるためです。
比較的難易度の低い問題は問題文で図が与えられているので、わざわざ自分で描かない方が速く解けます。
しかし、家で練習するのであれば自分で描いた方が確実に力はつくのです。
式や図をかけない本当の理由
子どもの宿題ノートを見ると、式を全く書かずに答えだけ書いていることが多々あります。
「どうして式を書かないの?」
と聞くと、
「めんどくさいから」などという返事が返ってきます。
式を書かなければならないと思っている保護者にとっては衝撃ですね。
こんなことをしていて力がつくのだろうかと心配になるかもしれません。
大丈夫なのでしょうか?
それは私にもわかりません。
テストの結果で判断した方がいいと思います。
他の子に比べて成績が悪いようなら、勉強のやり方が悪いのかもしれません。
あるいは他の原因があるのかもしれません。
いずれにしても、答えしか書いていなければ原因を特定するのは難しいです。
そこで、「めんどくさい」理由を本人に聞いてみましょう。
・式を書くと手間がかかるので時間がもったいない
これは塾の方針に合致しているのでOKです。(間違えてさえいなければ)
・塾で書かなくていいと言われた
これも塾の方針に従っているのでまあOKですね。(間違えてさえいなければ)
・書かなくてもわかる
これは”式を書かない理由”になっていないので×です。
・書かんでもええねん
日本語(標準語)ではないので×です。
いや、理由を説明していないので×です。
さて、ここで一番大事なのは書いたかどうかではありません。
書かなければならない状況になったら書けるのかということです。
「めんどくさい」などと言いながら、実は式が書けないという子が割と多いのです。
何を書いていいかがわかっていない子もいます。
式と計算(筆算)の違いすらわからない子もいます。
答えが合っているのなら、頭の中で計算は出来ているはずです。
それを言語化することができないのです。
どうやって考えたかを聞いてみても、
「ここをガッチャンってやって、パーってひっくり返してボーンと引いたらできた」
などと意味不明の説明をします。
塾の先生がそういう説明をしているのかもしれません。
塾によって謎の公式(裏技)があったり、わけのわからない呼び方をしていることがあります。
解説を見ても、なぜこんな式になるのかわからない謎の計算式が出てくることもあります。
でも、それを書けばいいんです。
書く練習をしないから書けないんだと思います。
まだ文字を覚えていない幼稚園児みたいなものだと考えて、書き方を教えるところから始めてみたらいいかもしれません。
覚えたらすぐに書けるようになります。
数をこなしていけば、だんだんすっきりした式(無駄のない式)が書けるようになります。
で、書けるようになったらもう書かなくていいんです。(指示がない限りは)
間違えた問題を解き直すときは式を書いた方がいいです。
どこで間違えたのかがはっきりわかります。(わかる人には)
証拠も残ります。
間違って覚えていたり、記憶がすり変わったりすることがよくあるので、たまにメンテナンスが必要なのです。
図は練習しないと描けません。
正方形、正三角形、円などの基本的な図形を描かせてみると実力がわかります。
中学受験ではあまり定規やコンパスは使いません。
使ってもいいと書いてあっても使う必要はありません。
描くのに時間がかかるからです。
結論
・「めんどくさい」とか言っている人は、本当はかけない可能性が高い
判定方法は簡単です。「かきなさい」という指示を出せばいいのです。
どんな言い訳をしようが、かけない人はかけないのです。
・かけない原因は練習不足
何時間か練習すればできるようになると思います。
ちなみに中学・高校で習う数学は式が書けないと完全にアウトです。
テストで激しく減点されます。
証明問題が出てきたあたりで深海に潜り始めます。
最難関中でも、偏差値40台の難関私立中でも数学の内容は同じです。(進度・難易度は違います)