長文が苦手だという子がいます。
長い文章になると意味がわからないと言うのです。
まだ低学年であったり、下のクラスにいるというのなら無理もありませんが、高学年で上位クラスにいるのなら致命傷になりかねません。
特に最難関志望ならなおさらでしょう。
といっても国語の話ではありません。
算数や理科の長文問題の話です。
算数にも時々長文問題が出てきます。
え?そんなに長文なんてあったっけ?
と思うかもしれません。
私もそう思いました。
しかし、生徒に聞いてみたところ、
「これ」と言って出してきたのが5行くらいの文章題。
「どこが長いねん!」という話ですが、本人は長いと感じているようです。
そういうときは子供のペースで1行ずつ一緒に読んでいきます。
どこで引っかかっているのかを探るためです。
最後まで読んだだけで「わかった」という子もいます。
「最初からそう言ってくれたらわかるのに」と。
「そう書いてあるやん!」
一体何が足りないのでしょうか?
読解力?
理科の問題はもっと長くなります。
塾のテキストにはそこまで長い問題はあまり出てきませんが、過去問なんかをやり出すとものすごく長い文章が出てきます。
赤本でいうと大問1題で1ページなんていうのは当たり前で、下手をすると2ページから3ページにわたるものもあります。
実際に解いてみると、それほど計算が難しいわけでもなく、問題文に書いてある通りに計算していけばすんなりと答えがでるものも多いのです。
なのにそれがわからないという子が多いのも事実です。
同じレベルの問題であっても、問題文に図が少なく、文章が多いものほど難易度が高くなります。
テストでも正答率が低くなるのです。
当然下のクラスになるほど解けなくなるわけです。
それほどレベルの高い学校を受験するわけでないのなら、そういう問題は捨て問だと思って諦めてしまってもそれほど合否には影響しません。
しかし、最難関中を目指し、その先に国立大学を目指すのであればその程度の長文が読めないようでは前途多難の様相を呈していると言っても過言ではありません。
長文が読めない、つまり理解ができないのはどうしてなのでしょうか?
まず、語彙力の問題が考えられます。
説明が理解できない原因の一つとして、説明文中の語句が読めない、意味を知らないという可能性が考えられます。
大手塾に通う子であれば、テキストの問題に出てくるレベルの語句は知っていて当然という気がするかもしれませんが、意外に難しい単語が出てくることがあります。
先日も、小5の子から「へだたる」の意味がわからないと質問を受けました。
その単語を知らないが故に、速さの問題が解けないのです。
”吾へだたるを知る”瞬間でした。
1つわからない単語があると、それがキーになっている問題では命取りになる、というのを大学受験の英文和訳で嫌というほど経験しました。
英語なら誤訳で減点されても部分点は取れるかもしれませんが、算数では無理です。
頭の良し悪し以前に、知識の問題ですから練習を繰り返して経験を積むしかないでしょう。
意味が理解できてもそれをまとめる力、つまり要約力が必要になります。
そもそも算数や理科でなぜ文章が長くなるかというと、説明が多くなるからです。
例えばわざと図や表を示さずにそれを文章だけで説明しようとすればそれだけ文章が長くなります。
難易度も一気に上がるので発展問題になるほどそういう問題が増えてきます。
そこにあまり問題に関係のない数値や登場人物を入れて、話をややこしくするというのもよくある手法です。
となると、そこから必要な情報だけを抜き出し、まとめる力が必要になってくるのです。
図や式を書かない子はだいたいここではじかれてしまいます。
重要な事柄だけを覚えておこうと思うと記憶力が必要になるからです。
問題演習を繰り返せばそれも容易くできるようになりますが、それはかなり上級レベルです。
入試問題においては特別な事情があってやむを得ず長文になる問題というのも存在します。
それは小学校の学習範囲を著しく超越する場合です。
つまりは高校の教科書に出てくる基本問題を小学生向けにアレンジした問題ということです。
小学校では習わない三平方の定理を使う問題を出題しようと思ったら、まず三平方の定理の例を示し、それを利用して解くように促さなければなりません。
塾で慣れている子にしたら全く不要な説明で、読まなくても簡単に解答できるのですが、受験生はそういう子ばかりではありませんから、そういう配慮をしなければならないのです。
(しない学校もあります)
理科でも2乗に比例、反比例する値の計算などがよく出てきますが、その際には2乗という言葉は使えませんから、とりあえず表を見せてそこから規則性に気付きなさいという暗黙の了解のようなものが存在します。
小学校範囲を逸脱していたら入学試験として不適切ということになりますから、下手に裁判沙汰になっても面倒です。
そこで説明を読めば小学生の知識でも解答を導くことが可能になるようにしているわけですね。
計算そのものは簡単な場合が多いですが、文章が恐ろしく長くなります。
理科や算数の問題の場合、さらに物事を論理立てて考える力が要求されます。
例えばA=BかつB=Cが与えられたら、A=Cであることが理解できなければなりません。
長い説明を読んで要点を理解したうえで、そこから発展させて考える能力が要求されるわけです。
あとは処理能力です。
長くなればそれだけ処理も多くなります。
つまり時間がかかるわけです。
したがって制限時間内に解くためにはスピードが要求されるのです。
ひょっとしたら文章を読むときに頭の中で音読する人が多いかもしれませんが、ふつうに会話する速度で読んでいたら時間内には終わらないかもしれません。
時間がかかりすぎると読んだ内容をどんどん忘れていきます。
テキストの問題文を読むのにかかる時間を計ってみるといいと思います。
1行読むのに5秒もかかっていたら遅すぎます。
速い子は1行を1秒くらいで読みます。
頭の中で音読しようとしたら噛んでしまうでしょう。
というより、音声にならないかもしれません。
ときどき「あ~」とか声を出しながら問題を解く子がいますが、それは頭の中での音読を阻止するのに有効な手段だからかもしれません。
「そんなに速く読んだら内容が頭に入らない」という人がいるかもしれないので先に言っておきます。
それは処理能力の問題です。
能力が低いとしたらそれは練習量が少ないからです。
「速くすると間違える」というのも単なる言い訳で、問題があるとしたら処理の仕方であって、速度が原因ではないでしょう。
長文に慣れるためには読書をするとか、問題演習量を増やすというのが有効な手段の一つですが、大事なことを覚えておいてほしいのです。
ゆっくり練習していても速くはならないということです。
急に速度を上げても処理が追いつかなくなります。
速さに少しずつ慣らしていかなければならないのです。
「文章長すぎる」
「何を言ってるのかわからない」
結局それは読解力がないからなのです。
読解力のない子がいくら成長したところで、努力をしなければ自然に身に付くようなものではありません。
単に読解力のない大人になっていくだけの話です。
そうならないためにも何か気をつけた方がいいのではないでしょうか。