近畿圏で中学受験を目指す人の多くが憧れる「最難関校」というのがあります。
近畿圏ではトップレベルの学校を「最難関校」、そして中堅レベルの学校を「難関校」と言います。
大手塾が揃ってそのような呼び方をしているだけで、その定義や区分は曖昧です。
そこで、今回はその辺を検証していこうと思います。
男子最難関校(近畿圏)
男子と女子では最難関校の定義が異なります。
共学校でも学校によっては男女の募集定員枠の差があり、女子の方が難易度が高くなっている学校があるからです。
【男子最難関】
灘(男子校)
東大寺学園(男子校)
甲陽学院(男子校)
西大和学園(共学校)
洛南高等学校附属(共学校)
大阪星光学院(男子校)
洛星(男子校)
大まかに偏差値順に並べてみました。
塾によって偏差値が異なるので、順位が変わるかもしれません。
西大和の方が甲陽より難しいのでは?という意見もあると思いますが、西大和は県外受験や21世紀枠(専願)もあり、単純に本校入試の偏
差値だけでランク付けしていいかは議論が必要になるかと思います。
実際のところ、合格者の上位層は灘、東大寺に抜けるので、単純に入学者のレベルを比較するのは適切ではありません。
かといって、甲陽合格者でも西大和不合格という受験生も多いので、本校入試に限って言えば甲陽より難易度は高いと言っていいでしょう。
また、学年上位を女子が占めているので、合格実績も単純に比較するのは適切ではないと思います。
洛南の偏差値は併願だとかなり高くなりますが、実際に入学する生徒の多くは専願または専願切り替えですから、専願の偏差値が最低ラインと考えることができます。
西大和と同様に、男子併願合格者の上位層は灘に抜けるので、男子トップ層は灘残念組が占めると思われます。
甲陽残念組にとっては洛南切替専願もけっこうハードルが高いです。
甲陽合格者は洛南を併願で受験することになるので、これも合格はなかなか取れません。
学年上位は女子(灘A判定レベル)が占めています。
洛星は最近どこの塾も扱いが低くなっているように感じます。
そもそも前期後期の2回も入試を行うのは最難関としてどうなのかという意見もありますが、依然として京都府内の男子校のトップなので(2校しかありませんが)、最難関という扱いなのでしょう。
洛星合格者数がトップの馬渕教室は合格実績のページで洛南や星光より上に表記しています。
京都を地盤とする成基学園も洛星を高い位置づけにしています。
六甲学院や高槻は最難関ではないの?と思う人もいると思います。
六甲B日程は灘コースの併願校なのでそれ以外の志望校別コースでは押さえ校にはならないと思いますが、A日程はそこまでレベルが高くはないので、難関上位校という位置づけになります。
高槻A日程も男子はそこまで高くありません。
須磨学園Bコースは偏差値でみると比較的高いのですが、日程的に灘・甲陽、西大和・高槻B日程などと重なるため、大手塾にとっては男子最難関の併願校として扱いにくいと思います。
女子最難関校(近畿圏)
かつては神戸女学院が女子最難関のトップに君臨していましたが、近年上位校の共学化によって状況が変わってきました。
【女子最難関】
西大和学園(共学校)
洛南高等学校附属(共学校)
四天王寺医志・英数S(女子校)
神戸女学院(女子校)
この4つがトップレベルと考えることにします。
女子の場合、女子校派と共学派で大きく意見が分かれます。
住んでいるエリアによっても考え方が変わります。
基本的に淀川越え(大阪駅乗り換え)を嫌う傾向があり、通学時間を気にする家庭が多いです。
四天王寺医志に関しては、西大和・洛南の併願校として考える人が多いかと思います。
共学志望なら高槻ですね。
主な併願校としては、
高槻(共学校)
帝塚山S選抜(共学校・別学)
清風南海S特進(共学校)
須磨学園(共学校)
白陵(共学校)
神戸海星(女子校)
甲南女子Sアド(女子校)
神大附属(国立)という人もいます。
併願校の選び方も、女子VS共学、居住地域によってかなり変わってきます。
偏差値を学校のランクのように捉えている人が多い気がしますが、あくまでも偏差値は合格最低ラインです。
例えば洛南併願の偏差値は高いですが入学するのは専願がほとんどで、さらに男子専願、内部進学の存在を考えなくてはなりません。
そうすると学校の授業レベルという観点から見たら、男子専願あたりのレベルが適正レベルではないかと思います。
西大和も同様に人数の多い男子の平均レベルが学校のレベルと考えるのが妥当です。
併願校の場合は、前期日程、A日程での募集人数が多いですから、その日程の偏差値が学校のレベルと考えた方がいいでしょう。
大学合格実績に関しては、医学部の合格者は基本的に学年上位から出るので、医学部合格者数以下の順位をキープできるかどうかを判断するといいかと思います。
女子は男子のようにある日突然覚醒してそこから猛勉強して大逆転するタイプは少ないです。
最初からコツコツ頑張って上位をキープする人がそのまま上位でゴールします。
中学に入ったら塾に通うことを前提にするのなら、通塾しやすい学校(学校の自由度と通学距離や経由)を選ぶという考え方もあります。
最難関校の定義(大手塾)
基本的に塾が「最難関校」と位置付ける学校の特徴。
・人気(認知度)が高く、難易度も高い学校
・基本カリキュラムでは対応できない難易度の学校
・志望者が多く、その学校に特化した対策を行う必要がある学校
難易度について
塾内の偏差値でだいたい60を超えるような学校は最難関コースの対象校となります。
(偏差値は塾によって異なります。)
後期日程の偏差値が高い場合は、それが最難関コースの併願校になっています。
これは塾の通常カリキュラム(いわゆる平常授業とかベーシックなど)だけを受講していると、対策が困難なレベルの学校です。
入塾タイミングとしては遅くとも小3くらいまでが望ましく、成績上位者向けの特訓講座(最高レベル特訓など)を受講すべきです。
特訓講座というのは通常の授業よりも難易度の高い内容を扱う授業で、小5までは次の学年の内容の先取りになっています。
つまり、小5までに中学受験の基本内容を習い、小6は最難関レベルの対策をメインにしていくという流れなのです。
灘や西大和女子・洛南女子を目指す場合はさらにその中で上位に入らなければなりません。
ですから、その中には小1から塾に通っている人も多いかと思います。
飛び級
一部の塾では飛び級制度を認めています。
本来の学年の1つ上の学年の入塾テストに合格すればその学年を受講できるというものです。
小6を2回やることになるわけですが、そのタイミングで転塾する人もいるので塾側はいろいろと対策を考えています。
例えば、飛び級では灘コースを受講できないとか、0組には入れないなど。
ですが、さすがに2年目になると余裕が出てくるというか、時間を持て余してしまうので、複数の塾を掛け持ちする人がいるというわけです。
塾が合格者数を増やすためにやっているという陰謀論も根強いですが、そもそもは複数の塾を掛け持ちしたいという受験生のニーズにこたえるためのサービスですから、その是非を問うようなことはしません。
特訓講座
通常授業よりも難易度の高い問題を扱いますから、受講資格が設定されています。
偏差値、学年順位、あるいは特定のテストでの成績で受講資格が得られたり、得られなかったりします。
受講すれば通塾日数が増え、宿題量が増えるので当然生徒には負担が掛かります。
というより、負荷を掛けるための講座なのです。
ですから、基礎学力がない人にとってはかなり苦しいものとなります。
ここで言う基礎学力というのは、中学受験における基礎レベル(偏差値50程度の学校に余裕で合格できるレベル)という意味で、その難易度は塾によっても異なります。
もちろん特訓講座の内容は学年が上がるほど難易度も上がります。
ですが、小6前半までの内容は通常授業でもいずれは習う内容です。
難関上位校を目指す人でも小5までは受講しておいた方が圧倒的に有利になります。
受講資格に届かない人はまず資格を取るために必要な基礎学力を身に付ける方向で対策をした方がいいと思います。
つまりは公開テスト等で正答率の高い問題を落とさないようにするということです。
志望校別コース
小6になると通常授業とは別に志望校別特訓が始まります。
2月から始まる塾もありますが、そうでない塾でも春期講習から大まかにコースが分かれます。
基本的には日曜日(月2回)ですが、それなりに宿題量もあり、クラスが多ければクラス替えがあるのでテスト勉強も必要になります。
夏休み以降にコースが細分化されて、そのまま入試直前まで志望校別コースで引っ張っていきます。
12月に通常授業が終わるので、冬休み以降は志望校別コースに分かれて入試に突入します。
最難関レベルの学校を目指すコースは当然ながら受講資格が存在します。
A判定偏差値よりは低く設定されていて、指定された期間内に1回でも到達できれば受講することができます。
※偏差値についてはまたそのうち説明します。
ですが、当然そんなレベルのままでは上のクラスには上がれません。
3クラスあったとすると、2組の真ん中くらいまでに入っていないと合格できる可能性はかなり低くなります。
合格率の高い塾の場合は、この受講資格が他塾に比べて高めに設定されていると考えてください。
春期講習で最難関コースを受講する人のうち、何割かは夏期講習までに脱落していきます。
受講資格が引き上げられるからです。
夏までに頑張って偏差値を上げればいいとみなさん考えますが、もう少し上の偏差値の人たちも絶対に下げたくはないと考えているので、なかなか厳しい勝負になります。
少なくとも今の時点で負けているのであれば、勉強量が圧倒的に足りないか、現状の勉強方法に改善の余地しかないと考えた方がいいですね。
安定して成績を上げるには全力で頑張っても2~3ヶ月は掛かります。
今から頑張らないと夏期講習の受講資格(5月~6月の成績)が取れません。
上位クラス
最難関校に合格する人たちはだいたい塾でも上位クラスに在籍しています。
そこで多くの人は、「上位クラスに入ればいい」と考えます。
努力して成績を上げて上位クラスに上がるというのが当たり前ですが、中にはいろいろと小細工をして上位クラスに上がろうと試みる人たちがいるのです。
例えば、教室の移籍をしたり、転塾をしたり、入塾テストを何回も受けなおしたりと裏技みたいなことを考える人もいます。
おそらく、上位クラスに入れば”良い先生”がいて、”レベルの高い授業”が受けられて、ライバルたちに引っ張られてやる気が出てさらに成績が上がるなどと考えている人もいるのではないでしょうか。
上位クラスの授業は何が違うのかというと、授業で扱う問題とスピードです。
全クラスで共通のテキストを使っていたとしても、上位クラスは宿題範囲が多く、それがテストの出題範囲にもなっています。
それを同じ授業時間内ですべてやろうと思うと一番下のクラスの3倍くらいのスピードになってしまいます。
さすがにそれではなかなかついて来れないので、基本的な内容は理解できているものとして省きます。
特訓講座を受講している生徒の割合が高いので、すでに基本的な内容は前の学年ですでに習っているわけです。
その学年で新しく出てくる内容は説明しますが、それ以外はどんどん飛ばしていきます。
授業は解説よりも問題演習が多くなったりします。
それでも全部の問題は出来ないので、そこからどの問題を選ぶかは現場の講師の判断になります。
トップクラスの場合は、質問がたくさん出そうな最も難易度の高い問題を中心に授業で解説してしまいます。
2組あたりになると逆に最も難易度の高い問題は無理だろうと判断し、その問題は”捨て問”扱いにしたりするのです。
そのかわり、2組レベルの子が間違えやすい問題を中心に扱うわけです。
ですから、そのクラスのレベルに合っていない人はもう何をやっているかもわからないと思います。
通常授業は3科の成績でクラス分けするので、苦手科目で苦戦する人が多いかと思います。
バランスよく学力をつける勉強を心掛けたいところですね。
良い先生というのがどういう意味なのかは知りませんが、同じ先生が下のクラスも担当することがあるので、上のクラスの先生の方が良い先生という理屈は成り立ちません。
ですが、塾のクラスは能力別クラス編成ですから、成績の良い子が上のクラスに来ます。
上のクラスにいるから成績が良くなるのではなく、成績が良いから上のクラスに入れるのです。
そこを勘違いしてはいけません。
お金持ちが豪邸に住んでいるからと言って、豪邸を買えばお金持ちになれるのか?という話ですね。
そもそもお金がないと買えないんですけどね。
お金持ちになりたいのか、豪邸が欲しいのか、それを間違えないようにしなければなりません。
というわけで、上のクラスに入りたかったら成績を上げることを第一に考えましょう。
目指すのは上のクラスの平均値です。
ギリギリの成績で上がると上のクラス内では最下位ですから、次のクラス替えで落ちるまではずっと床を舐め続けることになります。
つづく