塾の新学年が始まってから1ヶ月半ほど経ちました。
新入塾の人もいいかげん塾のペースにも慣れてきたころだと思います。
もう1年以上通塾しているという人でも学年が上がると科目が増えたり難易度が上がったり宿題量が増えたりしてペースが乱れますが、さすがにもう3月ですからいつまでもそんなことを言っていられません。
でも、ひょっとしたら学力テストの成績が却ってくるたびに一騒動という人もいるのではないでしょうか。
一喜一憂するなとよく言われますが、なぜそんなにしつこく言われるのかというと、みんな一喜一憂するからです。
成績があまり変化しない人は一喜一憂しないので、「一喜一憂するな」というのは「成績を安定させろ」ということなのかもしれません。
さて、答案や成績が却ってくると家の中はさながら国会の証人喚問のような空気になりがちです。
「この問題はなぜ解けなかったのですか」に始まり、
「ちゃんと見直しをしないから間違えたのではないですか?」、
「今後どのようにされるおつもりですか?」と。
これに対してお決まりのセリフが「全力を尽くしたが時間が足りなかった」でしょうか。
「あなただけ試験時間が少なかったというのですか?」
「そのようなことではございません」
「では時間が足りないというのはどういうことですか?」
「問題が難しかったので時間がかかったのです」
「それはあなたの実力が足りないからですか、それとも処理速度が遅いからですか?」
「今回は想定外のミスが発生したために対処に追われ、やむを得なかったと思います」
「では今後同じような状況が発生したらまた同じことを繰り返すのですか?」
「いいえ、これは本来の実力ではございません。」
「つまり次は大丈夫だということでしょうか?」
「そのように認識しております。」
というような不毛な討論を繰り返してはいませんか?
ところでこういった場面でよく出てくる「本当の実力」って一体何なのでしょう。
・本来であれば取れるはずの点数
・ミスや勘違いがなければ取れていたはずの点数
・過去数ヶ月の平均値
では思ったよりも点数が高かったときはそれは「本来の実力」ではないと捉えているのでしょうか?
ミスはあるものの正答率の低い問題を正解しているので学力は高いはず。
今回は学校行事等で勉強時間が十分に取れなかった。
風邪をひいて体調が悪くて実力を十分に発揮できなかった。
国語は良かったけど、算数が悪かった。これで算数が良くなれば成績は上がるはず。
みなさん本当によくこれだけの言い訳を思いつくものです。
テストのときにそれくらい考えることができたらきっと成績は上がるのではないでしょうか。
話をまとめてみると、「本当の実力」と言うのはそんなに欲張ったことを言っているわけではないのですが、かなり理想的な状態を指しているようです。
「すべてが都合よくいった場合の最低値」とでも表現したらいいのでしょうか。
でも、最低値というよりそれは絵に描いた餅です。
どんなに低温で圧力をかけても液体にならない理想気体のようなもので、実在はしないのです。
ここで夢を追いかけるみなさんに本当のことを教えましょう。
本当の実力をしる唯一の方法です。
それは、塾から返却された成績表を見ることなのです。
そこに書かれている偏差値が今の本当の実力です。
点数自体はあまり気にしても仕方がありません。
偏差値は同じテストを受験した集団の中の立ち位置を示しています。
そして、今回の結果は紛れもなくその瞬間の実力を示しているのです。
この問題さえ合っていたら、
あと5分あれば、
あと何点取れていたら、
何を言ったところで、塾側の採点ミスでもない限りは点数は変わることはないのです。
うっかりミスをおまけして正解にするとしたら、それを全員に適用しなければなりません。
時間を5分延長するとしたら、全員5分延長しなければなりません。
点数は上がるかもしれませんが、平均点も上がります。
「これくらい取れるはず」と思っている点数は単なる思い込みでしかありません。
これから現実とのギャップを努力で埋めない限り、取ることのない点数なのです。
その理想の点数でさえ志望校の偏差値に届いていなければ夢は夢のまま終わります。
夢や理想を捨てろということではありません。
夢を現実に即したものに変えるか、あるいは現実を夢に近づけるために軌道修正を行うか、それを考えるための機会が学力テストなのです。
宝くじか何かと勘違いしている人もいますが、どちらかというと病院の検査のようなものです。
数値が悪かったら生活を改善するか、あるいはすぐに治療を始めた方が生存率は高くなるかと思います。
数値が良くなっているのならそれをさらに継続した方がいいでしょう。
今月頑張っていい結果がでたのであれば、ここでやめてしまうとリバウンドが待っています。
塾講師は平均値で考えることが多いかと思います。
過去3ヶ月くらいの平均を見て、だいたいこれくらいの実力だろうという判断をします。
しかし、平均値で考えるということは確率で考えるということでもあります。
次回の成績が過去の平均値を超える確率は50%、下回る確率も50%です。
それでは危険すぎるので、もう少し低く見積もります。
例えば、偏差値50、47、53と取っている人であれば平均値は50ですが、これで偏差値50の学校を受けるのは危険です。
偏差値47の学校なら90%以上、偏差値49の学校なら60%くらいかな、と予測するわけです。
ところが生徒や保護者はこの成績なら偏差値53の学校に行けると考えがちです。
塾講師からしたらかなり無茶な志望校という印象ですね。
チャレンジ校という位置づけならいいかもしれませんが、併願校としてはありえないレベルです。
塾で相談するのであれば、それくらい認識の違いがあるということを知っておきましょう。
【今日のまとめ】
本当の実力 ⇒ 成績表の数値