「諦めなければ夢は叶う」なんて言われると嬉しいという人もいると思います。
そんな人はきっと「志望校を変えなければ合格できる」といった感じに脳内変換しているのでしょう。
塾の先生はあまりそういうセリフを口にしません。
何故だと思いますか?
諦めなければ夢は叶う
命題P「諦めない」
命題Q「夢は叶う」
とすると、
「諦めなければ夢は叶う」というのは、PならばQ(P⇒Q)という命題になります。
これが真なのか偽なのかを考えてみましょう。
真であることを証明するのは困難ですが、偽であることを証明するには反例を1つ挙げればいいのです。
諦めずに頑張り続けたのに、志望校に合格できなかった人が一人でもいれば「偽」であることが証明できます。
一般的に受験者数は募集定員を超えるので、よっぽど定員割れでなければ必ず不合格者が出ます。
そこから考えると、中学受験において「諦めなければ夢は叶う」というのは成り立たないことが誰でもわかりますね。
ところが、見事第一志望に合格した人たちはみんな口を揃えて「最後まで諦めなかったから夢が叶った」と言います。
これはP⇒Qの逆、すなわちQ⇒Pについて語っているのです。
つまり、「夢を叶えたならば、最後まで諦めなかった」ということになります。
この場合の「諦めない」というのは第一志望校を変更することなく受験するという意味で使われます。
ということは、もう少し具体的に書くと「合格した人は志望校を変更しなかった」ということですね。
これは当たり前すぎますね。
誰が見ても「真」の命題ですね。
ですから、彼らが言っていることが論理的に間違っているわけではありません。
ですが、これから受験しようと考えているみなさんはまだ合格していないので、Q⇒Pは「偽」となってしまいます。
P⇒Qの「裏」を考えてみましょう。
P:「諦めない」の否定は「諦める」です。
Q:「夢は叶う」の否定は「試合終了」ですね。
ということは、P⇒Qの「裏」は「諦めたらそこで試合終了ですよ。」になるわけです。
これはつまり、「受験しなかったら合格は出来ません」ということなので「真」です。
以上から考えて、諦めないことは夢を叶えるための「必要条件」であると言えます。
しかし、諦めないだけでは夢を叶えるための「十分条件」にはなっていないのです。
で、そんなことはわざわざ文章で説明するまでもなく、みなさんわかっているはずです。
では、どうすればいいのでしょうか?
一般論
夢を叶えた人、成功した人、志望校に合格した人に共通することを考えてみましょう。
もちろん「諦めなかった」ということなのですが、もう少し具体的に考えてみましょう。
志望校を諦めないだけでは十分条件にならないことはわかっています。
では、それ以外に何か諦めなかったものがあるかもしれません。
確率的に考えて、志望校のA判定偏差値に届いていないのに諦めなかったからといって合格できる可能性は低いと思います。
合格するためには少なくとも本番で合格最低点以上の点数を取れるだけの学力が必要です。
自分の学力を知るためのテストが塾の模試なのですから、「模試でA判定を取る」あるいは「A判定偏差値以上の成績を取る」必要があるわけです。
模試を受けるのを諦めたら結果は出ませんから、少なくとも模試の受験は諦めない方がいいと思います。
しかし、これも同様に受験したからといって結果が保証されるものではありません。
つまり、「十分条件」にはならないということです。
となれば、どこかで学力を上げるための努力が必要になります。
つまり、勉強しなければならないわけですね。
志望校のレベルが高いほど難易度も高くなりますし、それに伴って勉強量も必要になります。
しかし、なかなか思うように時間が取れなかったり、問題を解くのに時間が掛かったり、解けなかったりするわけです。
そんなときにみなさんはどうしますか?
テキストの解説を見たり、塾の先生に質問して解決するのであれば、おそらくは時間さえあればすべて解決できそうな気がします。
でも、すでに遊ぶ時間を削り、食事の時間や休憩時間も切り詰めてギリギリの状態です。
これ以上時間を掛けていたら寝る時間がなくなってしまいます。
寝不足が続けば能率も下がるかもしれませんし、体調も崩してしまうかもしれません。
仕方がないので、どこかで勉強を打ち切らなければなりません。
問題はそこです。
つまり、解けなかった問題を解決させることなく時間切れにして諦めてしまっているのです。
それが毎日続いているという人もいると思います。
ですが、諦めたらそこで試合終了にはなりません。
試合は入試本番のことですから、まだ先の話です。
ということはつまり、「今ここで諦めたら入試本番で試合終了になる」ということなのです。
解けなかった問題というのは「積み残し」です。
日々の「諦める」という行為が、山積みになった問題を先送りにしていることに気が付いていないのです。
そのツケを払う日が入試本番当日ということになります。
この日までに決済できなければデフォルトです。
ですが、現時点で借金があって、それが日々増えていくという状況で、一体どんな奇跡が起きれば決済できるのでしょうか?
(入試当日に斜め前に学年トップレベルの受験生が座っているとか・・・。)
諦めないということ
というわけで、大事なのは日々「諦めない」ことかもしれません。
今日、あと30分頑張ったら今日の分はすべてクリアできるというのであれば、諦めずに最後までやりきることです。
あと1時間かかるとしても決して諦めないことです。
「出来るまで諦めなかった人」だけが出来るようになるのです。
「出来ないのに諦めた人」はまず出来るようにはなりません。
疲れたからといって、わからないからといって宿題を途中で諦めるような人がどうして成績も届いていない志望校を諦めることが出来ないのかは謎ですが、志望校を諦めなかったからといって合格する可能性が上がるわけではありません。
あと10点取れたら合格できるレベルなのだとしたら、あと10点を取れるようになるまで諦めたらだめなのです。
20点足りないなら20点分頑張らなくてはなりません。
たとえ50点足りなくてもそれは諦める理由にはなりません。
それだけ時間が掛かるわけですが、たとえどんなに時間が掛かっても出来るようになるまでやり切れば合格点に届きます。
今ここで諦めたら、入試本番で終了(不合格)ですよ。
諦めるのなら
何かを諦めるとしたら、睡眠時間とか休憩時間とか勉強以外に使っている時間を諦めるべきだと思います。
もし遊んでいる時間があるのならもう遊ぶのは諦めましょう。
テレビを見る時間があるのならテレビを諦めましょう。
ゲームやYouTubeを見る時間があるのなら、スマホを諦めましょう。
それがどうしても嫌なら仕方がありません。
もう何も言いません。
私も諦めます。
合格する人はどうしているかというと、時間が足りなくなるのを見込んで早めのスタートを切っているのです。
そんな低学年からやる必要ないとか、そこまで勉強させたら可哀そうとか、子どもはもっと遊ぶべきという人たちの嫌味を気にもせずにコツコツやっているのです。
アリとキリギリスでいうアリのような生き方ですね。
それを嘲笑うキリギリスは冬が近づくと食べ物もなくなり弱ってきます。
アリに助けを求めるキリギリスに対して意外にもアリは優しく対応するのです。
「どうぞ食べてください。その代わり、キリギリスさんのバイオリンを聞かせてください」
なんでアリはそんなに親切なの?と思う人もいると思います。
でもアリの食性を考えたらその行動は納得です。
エサが自ら訪ねてきてくれたのにそれをわざわざ断る理由はありませんね。
「夢は叶うまで諦めるな」
でもどうしても叶いそうにないと思ったら、夢を変えてしまうのはアリだと思います。
志望校ギリギリスのみなさんはどうしますか?
塾講師はよく「頑張ったら必ず結果が出る」という言い方をします。
これは「真」です。
入試を受けたら必ず結果は発表されます。
どんな結果になるかは知らんけど。
近畿の中学入試(標準編)2022年度受験用