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処理速度の限界に挑む その1

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中学受験において最も重要な要素の一つである処理速度について考えてみましょう。

ここでいう処理速度とは、問題を解く速度、つまり単位時間当たりに解く問題数と考えることにします。

しかし、分速0.7問とか言われてもイメージしにくいですから、1問当たりにかかる平均時間(分)、で表すことにします。

 

例えば宿題に1時間かかったとして、問題数が20問であれば、1問あたり3分というのが処理速度ということになります。

 

 

なぜ処理速度が重要なのでしょうか?

 

現実問題として、塾に通っていると毎週宿題が出ます。

低学年のうちは2科目だけしかなく、少し物足りなさを感じる人も多いと思いますが、学年が上がれば科目数も問題数も増え、クラスが上がればさらに問題数が増えて難易度も上がります。

最難関を目指して特訓講座も受講すれば、宿題量はもっと多くなるのです。

 

初めは順調に2回目までこなし、さらに前回の復習までやっていたはずが、あるときから急に宿題が回らなくなってしまうのです。

このときに能力の限界を感じるという人もいるでしょう。

しかし、同じ量の宿題を難なくこなしている子がいるという話を聞くと、これは生まれつきの能力の差なのだろうかと思うかもしれません。

 

生まれつきの能力を測定する方法などないので、単純に問題を解くのにかかる時間を比較してみることにしましょう。

 

宿題が順調に回る子と回らない子の差はどの程度なのでしょうか?

 

おそらくみなさんが思っているよりも差は少ないかと思います。

1問あたりにしたら1分~2分の差しかないかもしれません。

ところが、宿題が2回目まできっちり終わる子と、1回目の途中で挫折する子ではそのあとのテストの成績が大きく変わってきます。

それが積もり積もれば実力テストの偏差値の差となり、クラスの差となり、最終的には志望校の差、あるいは合否の差となるかもしれないのです。

 

どうしてそんなに大きな差になってしまうのでしょうか。

 

例えば身長が145cmの子と150cmの子が深さ150cmのプールに入ったとしましょう。

身長の差はわずか5㎝で、どちらもプールの底にかかとをつけると水のなかに完全につかってしまいます。

ところが、身長150cmの子は背伸びをすれば足をついたままギリギリ鼻と口を水面から出すことができます。

一方、身長145cmの子はどうやっても水面から顔が出ないので、立ち泳ぎをしなければなりません。

水面が10㎝下がればどちらも足がつきますし、10㎝上がればどちらも足がつかなくなります。

そういうギリギリの状況ではわずかな差が大きく影響するのです。

中学入試でも合格者の最低点の不合格者の最高点の差は1点になることもあるわけです。(3科×1.25倍の場合は1点未満もありうる)

 

 

さて、処理速度の話に戻りましょう。

処理速度って具体的にどれくらい違うものなのでしょうか。

例えば塾の宿題を解く時間を比較してみましょう。

授業で習ったあとで、初めて解くときにかかる時間を考えます。

 

塾で偏差値50くらいの子の処理速度を平均値と考えましょう。

科目や単元によって宿題にかかる時間はことなりますが、だいたい1時間かかったとします。

問題数が小問で30題だとすれば1問あたり2分という計算になります。

 

同じ宿題を偏差値45前後の子は1時間半くらいかかります。

(だらだらしている時間も含めます)

計算すると1問あたり3分になります。

 

偏差値40くらいの子は2時間かかります。

(全部解き切れたとします)

1問あたり4分になります。

 

もちろん宿題が全部解けない子もいると思いますが、解けた問題にかかった時間だけを考えると、遅い子では1問あたり5分~10分になります。

 

ただし、これは平均速度なので、遅い子であっても得意な問題は1問2分くらいで解けたりするのです。

 

ここで問題となるのは、テストでどれくらいの点数が取れるかということです。

テストが例えば50分で25題あったとしたらどうなるでしょうか。

1題に2分かかる子なら25題をといて全部正解なら100点

1題に3分かかる子なら16題をといて全部正解なら64点

1題に4分かかる子なら12題をといて全部正解なら48点

1題に5分かかる子なら10題をといて全部正解なら40点

1題に10分かかる子なら5題をといて全部正解なら20点

 

で、テストの平均点が60点くらいだったりするわけですね。

 

 

では速い子はどれくらい速いのでしょうか?

偏差値50台前半の子は同じ問題を40分くらいで解きます。

1問あたり1.6分(1分36秒)ですね。

ですが、これくらいの偏差値の子は1ランク上のクラス帯になりますから、宿題量が多くなります。

それが難易度の高い問題になりますから、けっきょくトータルで1時間くらいはかかる計算になります。

これを仮にB問題と呼ぶことにしましょう。問題数は10問で30分くらいかかるとすれば、

1問あたり3分です。

 

偏差値50台後半の子になると同じ問題を30分くらいで解きます。

1問あたり1.2分(1分12秒)です。

B問題は20分くらいで解いて、

1問あたり2分くらいになります。

 

偏差値60を越えるとスピードの差にばらつきが出てきます。

遅い子は偏差値50台後半くらいのスピードですが、速い子は劇的に速くなります。

基本問題が25問だとして、それを15分くらいで解く子がいます。

1問あたり0.6分(36秒)です。

B問題は10問10分くらいで解きます。

1問あたり1分です。

さらに難易度の高い問題(Cと呼ぶことにします)が10題追加されますが、速い子ならそれも10分で解きます。

 

 

トップレベルの子はさらにその上を行きます。

しかし、物理的限界というのがありますから、どんなに頑張っても最速で1問あたり5秒くらいが限界です。

その話はまた今度にしましょう。

 

偏差値40台の子が5分くらいかけて問題を解いている一方で、

偏差値50台の子が1ページ終わったと言っているわけです。

で、その偏差値50台の子が「難しい!」と言いながら5分かけている問題を、

偏差値60台の子が「瞬殺!」と言いながら15秒くらいで解いたりしているわけです。

 

 

 

 

 

アキレスと亀と言う話があります。

前方をゆっくり歩く亀をアキレスが追いかけるのですが、亀が最初いた場所にアキレスが着いたときに亀は少し前に進んでいて、そこからさらに亀のいる場所にアキレスが着くと亀はまた少し先に行っているので、アキレスは亀に永遠に追いつけないというものです。

これは数学の「極限」という考え方ですね。

(実際に競争するとすぐに追い抜いてしまいます。)

 

中学受験におけるアキレスと亀

アキレスは亀が遊んでいる頃から塾通いを始め、亀は4年生くらいになって塾に通い始めます。

亀がスタートしたときにアキレスは遥か前方を全力疾走しています。

亀はゆっくりアキレスを追いかけますが、始めアキレスがいた場所にたどり着いたときには、アキレスは姿が見えないくらい遠くに行ってしまっています。

そこで亀はさらにアキレスがいる場所に向かって進むのですが、果たしていつになったらおいつけるのでしょうか?

 

アキレスとの差を少しでも詰めようと思ったらアキレスより速くなる以外に方法はありません。

亀のままでは永遠に勝てないのです。

 

 

 

 

 

 



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