処理速度が上がらない最大の原因は心理的要因ではないかと思います。
つまり本来のスピードに対して何らかのリミッターが働いているということです。
例えば車の場合、国産車なら時速180キロ(軽自動車は140)のスピードリミッターがついています。
これは設定速度を越えると燃料供給を止めるものなので物理的な要因です。
排気量の大きい車やスポーツタイプの車であれば本来のポテンシャルはもっと高く、リミッターさえなければ時速200キロ以上で走ることが出来るように作られていたりします。
でも、リミッターは180キロで作動するのであれば179キロまでは出せるはずなのです。
ですが、それだけの速度を出したことがある人はほとんどいないと思います。
もちろん公道で出すと逮捕→裁判→懲役または執行猶予というレベルですね。
では速度を法定速度程度に抑えているのは一体何かというと”自制心”ということになります。
勉強における処理速度を制限する心理的な要因とは何でしょうか?
省エネ?
勉強をすると疲れます。
処理速度を上げると時間は短縮できますが、燃費は悪くなるのでトータルでみると余計に疲れます。
そこまでやる必要が特になければゆっくりやりたいというのが人間の心理です。
給料制で働く会社員と同じ心理ですね。
昇給も出世もないのに全力で仕事をするのは嫌ですよね。
仕事が早く終わっても帰れるわけでもなく、次の仕事が回ってくるだけです。
だったら怒られない範囲で適当にゆっくりやればいいという心理が働きます。
宿題をダラダラやる子も同じです。
早くやったからと言って遊んでいいと言われていても、実際は終わったら次の課題をやらされるだけだということを経験的に学んでいます。
遊ぶ権利を勝ち取ったとしても、丸つけだとか答案のチェックが厳しくなったり、何かとケチをつけられてやり直しを命じられることがわかっているので、よっぽど時間がないとき以外はさっさとおわらせようとは思わないものです。
解き方がわからないというのは心理的な要因ではありません。
いくら速く解こうとしても解けるわけではありませんし、ゆっくりやっても解けるわけではありません。
解き方を覚えるしかないのです。
集中力
勉強をやり始めるのに時間がかかる子がいます。
やりだして調子が乗ってくれば速度が出るのに、なかなかトップギアに入らないというケースです。
これも一緒ですね。
エネルギー保存則(エネルギーを極力保存しようとして働く闇の力)なのでしょうか。
ギリギリにならないと作業をしない人は多いと思います。
これはみずから極限状態に追い込むことで火事場のバカ力を引き出そうという作戦ですね。
こういう人には「普段からコツコツやれば・・・」という理論が理解できません。
目測を誤って期限に間に合わないこともよくあります。
無理~!
よく聞くセリフだと思います。
やりたくないときに良く使います。
中学受験レベルの問題はよほどの難問でもない限り、段階を踏んで解いていけば必ず解けるように作られています。
(解けなければ問題として成立しません。)
※暗記問題は覚えるしかありません。
つまり、「今から階段を上って」と言われている状況ですね。
それが10段くらいならしかたなく上りますが、100段くらいだと「無理~!」となります。
疲れるのはもちろんですが翌日(人によっては2日後)の筋肉痛が嫌だからです。
困難を乗り越えるよりも苦痛を回避することに全力を注ぐ方がより安全なのです。
ゆっくり丁寧に
中学受験の世界にもこの「ゆっくり丁寧に・・・」というのろいの言葉が蔓延しています。
”呪い”というより”鈍い”と書く方が適切だと思います。
物事を学習する段階の1つとして「ゆっくり丁寧に・・・」というのは確かに重要ではあります。
でもそれはごく初期の段階で、例えば解き方(手順)を覚えるとか漢字の筆順を覚えるというときには有効です。
しかし、その速度では全く勝負にならないことを知らない人が多いのです。
それはあくまでもコース(道順)を覚えるための下見であって、そのあと慣熟走行が必要なのです。
ゆっくり丁寧にできるようになれば速くなっても大丈夫と思っている人も多いようです。
速度が上がるとそこは別世界です。
それまでの常識は通用しなくなります。
上級者はすでに基本が身についていますし、十分に速度を出せる力がありますから、新しい知識を”ゆっくり丁寧に”入力すれば、すぐに最高速度で問題を解けるようになります。
いわゆる”1を聞いて10を知る”タイプですね。
ですが、中級者ではそれができません。
ゆっくり丁寧にやればゆっくり丁寧にできるようになりますが、速くはなりません。
速くなるには速くなるための訓練が必要なのです。
それを知らずに、自分には無理だと決めつける人が多いのは残念ですが、でもやっぱりその人には無理なのでしょう。
そんなことはないと思う人がいたら、実際に何かやってみたらいいと思います。
例えば”なわとびの2重跳び”なんかがいいですね。
ゆっくり丁寧にやってみてください。
よく楽器とかで「安物だから良い音が出ない」とか言う人がいます。
で、それをプロが演奏するとすごく良い音が出るんです。
もちろんもっと良い楽器を使えばもっと良い音が出せるのでしょうが、少なくとも安い楽器のせいにしている初級者よりははるかに良い音を出すのです。
そうするとその初級者は「この人は生まれつき才能があるからだ」と言い始めます。
そんな初級者も1年くらいやっているといつの間にか中級者になってきます。
すると周りにいる初級者を笑うんです。
(中級者の定義:初級者を笑う人。上級者になると初級者を笑わなくなります。)
で、初級者が上手く出来ないのを楽器のせいにすると、「楽器のせいにするな」とか言うんですね。
上級者になるとあまり自分より下の人を見なくなります。
自分が上達するためにより上の人を参考にするようになるからです。
ある日、急に地味な基本練習をもう一度やり始めたら上級者の仲間入りかもしれません。
話がだいぶそれましたが、処理速度というのはある意味で今の自分の限界を表しています。
それを上げていこうと思ったら、その限定要因を一つずつ取り除き、さらにスキルアップをしていかなければなりません。
かなり話を端折っているので、適当に行間を埋めながら解釈してください。
やり方どうこうよりもその方向性が大事ではないかと思います。